理由附記の制度とその程度①

理由附記

 国税(税務署)が処分をする際などに必要となる「理由の附記」ですが、平成23年度税制改正により改正(拡大)されました。
 一般的にあまり馴染みのない理由附記の制度ですが、税務実務上(特に、税務調査の結果として更正された場合)は重要になる局面もあります。
 本稿では、理由附記の「制度」と、理由附記に求められる「その程度」について解説します。

理由附記の法的根拠

 理由附記については、平成23年度税制改正以前から現在に至るまで、青色申告の特典の1つとされています。
 青色申告制度は、法人税と所得税にしか規定がありませんが、その他税目や加算税・延滞税については別途後述します。
 まず、法人税と所得税の条文を確認しましょう。

法人税法第130条第2項(青色申告書等に係る更正)
税務署長は、内国法人の提出した青色申告書又は連結確定申告書等に係る法人税の課税標準又は欠損金額若しくは連結欠損金額の更正をする場合には、その更正に係る国税通則法第28条第2項(更正通知書の記載事項)に規定する更正通知書にその更正の理由を付記しなければならない。
所得税法第155条第2項(青色申告書に係る更正)
税務署長は、居住者の提出した青色申告書に係る年分の総所得金額、退職所得金額若しくは山林所得金額又は純損失の金額の更正(前項第1号に規定する事由のみに基因するものを除く。)をする場合には、その更正に係る国税通則法第28条第2項(更正通知書の記載事項)に規定する更正通知書にその更正の理由を附記しなければならない。

※法人税法では「付記」となっていますが、本稿では統一して「附記」の表記とすることにします

改正による拡大

 これらの規定に加えて、平成23年度税制改正(平成25年1月1日施行)によって、理由附記の範囲が拡大されました。
 改正された条文は下記です。

国税通則法第74条の14(行政手続法の適用除外)
行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三条第一項(適用除外)に定めるもののほか、国税に関する法律に基づき行われる処分その他公権力の行使に当たる行為(酒税法第二章(酒類の製造免許及び酒類の販売業免許等)の規定に基づくものを除く。)については、行政手続法第二章(申請に対する処分)(第八条(理由の提示)を除く。)及び第三章(不利益処分)(第十四条(不利益処分の理由の提示)を除く。)の規定は、適用しない。

 カッコ書きが多く非常に読みにくい規定ですが、税務においては「行政手続法第8条と14条が適用になった」(正確には、適用除外が除外された、というのが正しい理解)ということです。
 では、税務で適用になる(なった)行政手続法の条文を確認します。

行政手続法第8条(理由の提示)
行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。(以下略)
行政手続法第14条(不利益処分の理由の提示)
行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。(以下略)

 これら行政手続法の規定により、例えば

・青色申告の承認申請を認めない場合

・税務調査によって(増額)更正する場合

など、納税者に不利益になる処分等をする場合は理由の附記(正確には「理由の提示」)をしなければならないということです。

理由附記制度の全体を整理

 ここまでをいったん整理すると、下記のようになります。

【法人税・所得税に関する更正】
・青色申告者
→ 個別法の規定により理由の附記が必要

・白色申告者
→ 行政手続法の規定により理由の附記が必要

【その他の税目や加算税など】
行政手続法の規定によって、理由の附記が必要

 以上の法律規定・根拠から不利益処分を受けた場合で理由附記がなかった場合、違法な処分として取り消されることになります。
 制度の根拠条文は、税法および規定が複数に分類されますので、整理して理解が必要となります。

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