特定非常災害の発生前に相続等により取得した土地等の評価

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 日本はもともと災害が多い土地ですが、地震や台風、大雨等により甚大な被害が発生するケースが近年多くみられます。

 相続や贈与で土地等を取得した場合、その土地等の評価は、相続開始時等の課税時点の価額で行います。しかし、相続、贈与等で土地等を取得した後、申告期限までに甚大な災害で被害を受けた場合、実際の土地等の価額が課税時点から大きく下落することが考えられます。このため大規模な災害について「特定非常災害」と指定されると、災害地域の土地(特定地域内)ついて、一定の減額をすることが認められています。

 ちなみに、今まで特定非常災害として指定されたのは、阪神・淡路大震災(1995年)、新潟県中越地震(2004年)、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)、平成30年7月豪雨(2018年)、令和元年台風第19号(2019年)、令和2年7月豪雨があります。

 相続、贈与等で評価の減額が受けられる「特定土地等」とは、簡単に言うと

①災害発生年の1月1日(贈与税の申告期限までに災害が発生している場合はその前年の1月1日)から発生日の前日までに取得していること
②特定地域内にある土地等であること
③災害発生時にその土地等を所有していること
④相続税等の申告期限が災害発生日以後であること

の要件を満たしている土地等です。

 被害を受けた土地等は、災害発生直後の価額で評価することとなります。しかし、実務的には災害後の価額を算定することは困難です。そこで、税務当局が特定地域内の一定の地域ごとに、特定土地等の災害発生後の価額を算出するための「調整率」を定めます。この場合、特定非常災害発生日の属する年分の路線価、倍率表に調整率を乗じて評価額を計算します。仮に特定非常災害の発生が令和元年である場合、相続の開始時期が平成30年12月であったとしても、令和元年分の路線価に調整率を乗じた価額により評価します。発生直後の価額で評価するため、使用する路線価は平成30年ではなく令和元年分となります。

 なお、特定地域に該当したとしても、被害の程度が軽微であるため調整率が1.0の地域もあります。この場合には減額はないことになります。

 特定非常災害として指定され、被相続人が所有している土地が特定地域内にあると、調整率が発表されるまではその土地の評価ができず申告書の提出ができません。このため、国税庁が指定した期限まで申告期限が延長されます。延長期間は、災害が止んだ日から10ヶ月としている場合が多いようです。なお、調整率が1.0とされた地域については、実際として評価額の減額はありませんが、申告期限は延長されます
 災害により被害を受けたため災害発生後貸付等ができない場合もあり得ますが、災害前に貸家の敷地であった場合には貸家建付地の減額が受けられます。調整率を除き、課税時期における現況で評価額は算定するためです。

なお、建物はこの減額の対象外のため課税年分の固定資産税評価額で評価します。ただし、一定の要件に該当すれば、災害減免法第6条による相続税又は贈与税の減免措置の対象となります。

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