2019年10月17日 開催セミナー
税理士から年間に約1,000件の税務調査の相談を受けている久保憂希也が
「税務調査で否認される節税・否認されない節税」と題して
●節税だと思ったのに否認された【事例】
●租税回避と否認されないための【線引き】
●各節税手法において否認されないための【要件】
を解説しました。
節税手法には非常に関心があるが、税務調査で否認されるリスクまで考えると、積極的な提案を躊躇してしまうという税理士には必見の内容です。

1977年 和歌山県和歌山市生まれ
1992年 智弁学園和歌山高校入学
1995年 慶應義塾大学経済学部入学
2001年 国税庁入庁、東京国税局配属 医療業、士業、飲食店、不動産関連などの税務調査を担当、また、資料調査課のプロジェクトで芸能人や風俗等の税務調査にも携わる。さらに、東京国税局にて外国人課税に関する税務調査も担当。
2008年 株式会社 InspireConsultingを設立し、税務調査のコンサルタントとして活動し、現在は全国で税務調査対策研究会を開催し、数千名の税理士に税務調査の正しい対応方法を教えている。
【節税策の否認根拠】⑤個人:必要経費不算入
久保:今からお話ししたいのは、話してたのは何だったかっていうと、必要経費の不算入の問題ですね。
で、そうすると、話をもう一回、不動産管理会社の方に戻すとですね、これがめちゃくちゃ大変だと思いますけど。
久保:個人の方で、不動産所得者がいました。
同族法人を作って、管理手数料を流すパターンというのを続けますけど、この場合に、いいですか、1億円あって、ここで例えばの話ですけども20%で、報酬、管理手数料を20%払っていたとして、2,000万円毎年流れているっていうのが、これはさっき言ったみたいに、行為計算否認という問題ありますよね。
一つは個人から所得を法人に流すことによって、税率の差分が生まれて節税になっているんですけど、それは租税回避になる可能性がありますよっていうことですけど。
もう一つの否認のパターンってのは何かっていうと、これを当然不動産管理料としてやっているんですけど、必要経費として認めませんよ、いうパターンなんで。
そうすると、どうなるかっていうともう分かると思いますけれども、2,000万円が不動産所得の必要経費にならないという否認を受けたわけですよね。
そうすると所得税側で言うと、年間に2,000万円の所得が上がるだけです。
上がるだけですよ、終了です。
法人側で、いやいやいや2,000万円の取引がないと考えるんだったら、こっち側が減額更正してくれよっていう話にはならないってことです。
あくまでも必要経費にならないという否認の受け方をするので。
分かりますか? 言ってる意味は。
なので、メルマガに今年の春、結構何回もこう書いたんですけど、一般的に言いますよ、この不動産のスキームだけじゃなくて一般的に言いますけど、一番否認リスクが高い租税回避とか節税のパターンっていうのは何かっていうと、必要経費、個人が法人に対して支払っている場合の必要経費に認められないってパターンが一番きついんですよ、違います?
他人事のように皆さん話聞いてらっしゃるので、税理士として事業所得がある、税理士なんで税理士業だと、会計法人を持っていると。
そうすると、あり得るのが税理士事務所として個人やってるんで、顧問契約であったりとか業務委託契約であったりとか何でも構わないですけども、顧問先との契約は全て個人で巻いていて、個人の口座に入金されている。
一方で、会計法人にお金を流したいわけですから、そのために会計法人があるわけですから、売上の何%という決めはあまりしないと思いますけど、定額で例えばですけども、会計法人の方にいくら流すのが一番得かな、月に80万円、年間960万円。
そうすると免税にずっとなりますし、考えた。
それで実際には、この会計法人の方は販管費は実際かからないので、そうすると役員報酬でごぼっと抜くと、そうすると給与所得控除が取れる。
法人税率が低い、だからそっち側にキャッシュが残っても何も困らない。
実際に会計法人で何やってるの、税理士やっているだけじゃん、代表者でいるだけじゃんっていうことであれば、これを今自分のパターンで考えたときにですよ、税理士さん本人のパターンで考えたときに、これが必要経費になりませんよって否認されたら、一番痛いでしょ。
会計法人に流したお金の80万円×12の960万円が、所得増になるだけですから。
法人側に減額更正してくれないんですから。
言われることが簡単なんですよ。
すいません先生、必要経費っていうのはですね、所得税法の37条に載っていまして、知っとるわ、載ってましてと。
事業の必要性がないと、必要経費にならないんです、だから必要経費なんです、って言われるわけですよ。
必要性があったから流したんだよと、いかに言っても、いやいやいや個人の事務所で売上が上がってて、同じ税理士さんがですよ、会計法人を使ってここに業務委託料流す必要性ってどこにありますか? って言われたら、ないねと。
ないんですよ、あるわけないんですよ、こんなもの必要性なんて。
だっていちいち会計法人に流す必要ないじゃないですか。
おそらく税務調査、皆さんが受けると多分こう言うんですよ。
違うんですよ、税理士事務所でやっている、会計の最終的なレビュー、まあ記帳代行でもそうですけど、レビューとかは株式会社の代表取締役としてやってまして、みたいな。
絶対無理だろそんなのみたいな、ありえないだろみたいな。
言うんですけどこれ、かなりきついと思います。
だって例えば、個人がですよ、不動産の話に戻しますよ。
個人が同族法人に管理手数料を払う明確な必要性ってないんですもんこれ、正直言わしてもらって。
じゃあ例えばですよ、MS法人で考えた場合に、MSの場合って二つ考えられて、一つのお金の流れがMS法人が仕入れをかまして、それに粗利のスプレッド20%ぐらい乗っけてクリニックに下ろす。
逆のパターンもありまして、実際にはクリニック側で売上を計上して、業務委託費とかは息子が医者じゃないとかっていうので、MSにお金を流す。
これ逆になっただけですよ、ネットで考えると同じですよ、分かります?
グロスで考えると入り口は違いますけど、ネットで考えて同じです、差引。
ですけど、法人側から入ってきたお金を、20%のスプレッド乗っけてクリニックに売れば、これ時価から相当乖離してればもちろん利益移転って話になりますけど、必要経費みたいに丸ごと絶対に否認されるのは、法人税法上ないんですよ。
一方で、個人から法人に支払った場合というのは、必要経費になりません、なぜなら必要性がなかったですっていうふうに言われたら、これもう終わりなんです話は。
だから、お金の流れっていうのが、いや同じじゃんって皆さん言うかもしれないですけど、税法の違いで考えれば、個人から法人にお金を流すってのは一番危険で、法人から個人にお金流すのは危険性は薄いんですよ、低いんですよ。
ただこれだけのことです、言っていることは。
で、なんでやねんって皆さん思うかもしれないですけど、実際にこれがそのメルマガでも書いたことあるんですけど、去年の大阪地裁。
久保:もう有名な判決が出ていまして、燃料、LPガス、石油、灯油なんとかの販売の小売会社の方が、同族会社に支払った業務委託手数料が争われた事案なんですけど。
これちなみに、額はかなり低いですよ、見ていただいたら分かりますけど。
このケースで言うと、こういうことですね。
個人事業主の方がいます。
個人事業主の方が燃料の小売販売をやっています。
ここに自分の法人を作ります。
自分の一人法人を作ります、だから個人事業主の方と法人の代表者が一致ってことですね。
ここに業務委託料を払います。
っていう、ただこれだけの話ですよ。
これ言ってることって、皆さんに置き換えさせていただくと、税理士事務所と会計法人と同じですからね、全く同じなので、言わせていただくと。
クリニックと医者の免許を持たない息子がやっているMS法人と全く同じですからね、これ、やっていることは。
委託費をこれを払っていてこっち側で当然ですけれども、役員報酬を取っている。
そうすると、役員報酬で繰り返しますけども給与所得控除がある。
その分だけ絶対的に所得は圧縮できる、所得の分類を変えるだけで所得を圧縮できるわけですから、馬鹿でも思いつく方法ですよこんなの。
で、役員報酬を取る、でも実際にやっていることは燃料の配達とか販売とかっていうことは、中身が全部同じなんです。
じゃこの法人って関係ないやん、払う必要ないやん。
同じことを同じようにやっててこれがなくても普通に成り立つやん。
ていうふうに言われて、必要経費として、実際に参入できないっていうふうにして、裁判で負けている案件なんですよ。
これ、ちなみにこれを取り上げてメルマガ書いたの春なんです。
私がこれを知ったきっかけになった事案が、実際にあるのが、社労士の事案なんですよ、社労士さん。
これ今年6月で事案終わったんですけど、社労士さんが、皆さん同じような士業の立場ですよね。
社労士さんが、事務所、売上で言うと数千万円ある。
自宅に法人を作って、皆さんの立場でいう会計法人みたいなものですよ。
でその方針は1人代表で社員もいない、自宅で登記している。
で払っている委託、業務委託料がいくらかって言うと80万円掛ける12の960万円。
役員報酬を毎月70万円もらってる。
給与所得控除を圧縮してる。
実際に、先生何やられているんでしたっけ社労士の方、って言って、家でね、レビューとかするんですよ。
やってること同じやん、仕事持ち帰っているだけじゃないですかと。
家でやる意味って何かありましたっけ。
ていうふうに言われて、必要経費として算入できないっていう話なんです。
これを5年間否認されるわけで、金額としてはすごい金額になるわけですよ、そりゃそうですよね。
っていうので、実際この結末は細かい話いっぱいあるんです、妥結としてはあるんですけど、実際にこれを言われるのが一番きついですよ。
だって必要経費は必要性がなければ、必要経費になりません。
お金を戻してくださいとかそういう話をしてないんですよ。
経費として認められないっていう話をしてるだけなんで。
所得が増になりますねっていうふうに言われるだけなので。
これめちゃくちゃきついんですよ、これが。
久保:挙句の果てにですよ、さっきのページに戻りますけど、必要性がありましたっていうことを立証するのは納税者っていうふうに言われてるんですよ、必要経費の必要性。
もうめちゃめちゃつらいですよ、本当の話。
ほとんどのものって必要性なんてなくないですか?
税理士が会計法人に業務委託費を流す必要性なんてゼロですからね。
大体この前から見てるとですね、誰が会計法人のお金流したか分かるんですけど。
だからですね、やるんだったら簡単なんです。
お客さんとの契約を3者社契約にして、個人法人とお客さんにするか、会計法人側で契約をして、株式会社で契約をして、お客さんから入金を法人が立てて、個人分に流す分を預り金にするか、預かってるだけでしょ。
法人から普通に経費として支払ってもいいですけど、必要経費の否認みたいの、丸ごと否認みたいのないので。
やり方変えないと、結構これをされるときついと思います。
で、もう一回話戻すんですけど、これが今国税内でブレイク中なんですよ、この情報が。
だってこんなのめっちゃ簡単じゃないですか、言ってしまえば。
これで絶対的に必要経費が、裁判でこの後高裁行ってるんですけど、簡単じゃないですか、必要経費になりませんっていうだけなんで。
これをされると今まで結構見過ごされていたようなものなんですけど、ちなみにですね先ほど言った社労士さんの案件、これセミナーでも喋ったことあるんですけど、ちなみにこの社労士さんの案件ですね、社労士としての売上、社労士事務所の売上、個人の売上が5,000万円いかない簡易課税の事業所なんですよ。
なのに、入ったのは、調査に入ったのは特監なんですよ。
個人課税部門特監なんですよ、話おかしいんですよもう。
完全に狙い打ちされているんですこれ、必要経費になりませんって。
というので、このさっきから行為計算否認とか事実認定とかって難しい問題出してますけど、一番、その節税とか租税回避と呼ばれる中で否認されやすいのは、これで間違いがないんです。
必要経費になりませんっていうだけなので、調査官は。
法人から個人に払うんだったらリスクは少ないですけど、個人から法人に払うと相当リスク高くなります。
個人⇒同族法人への支払取引をなくす
久保:ここに書いてある通り、個人から同族法人の支払取引をなくすっていうのがベストですよね。
減らすっていうのももちろんベターな方法ですけど、なくせればベストだと思います。
これ結構皆さんの顧問先さん、真面目に考えてくださいよ。
不動産管理会社、皆さんの顧問先さんの士業、あと個人のクリニックでMS持っているバージョン。
皆さん、当事者意識を持ちましょう。
皆さんのことです、これをされるのは。
ということで、個人から同族法人への支払いをなくさないと、必要経費、そんなもの必要ありませんよっていう否認リスクが一番高くなるということですね。
これは先ほど言った通り、行為計算否認の方がよっぽど幸せなんです、この話は。
行為計算否認であれば、増額と減額を加味してネットでお金を取られるんですけど、必要経費は片一方否認されて片一方は救済がありませんので、その分は気をつけてください、いうところになりますね。