法人に遺贈した場合の相続税等の課税関係

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配偶者や子供がいない方の場合、関係性の薄い兄弟姉妹やその子供(甥や姪)に相続財産を残すよりは、生前世話になったり関係性が深かったりした他人や法人に財産を遺贈する内容の遺言書を書く方が今後増えていくように思えます。
では、法人に相続財産を遺贈するという遺言書がある場合、相続税の課税関係はどのようになるでしょうか。
相続税法第1条の3第1項に納税義務者の規定があります。少し読みづらい条文ですが、納税義務者はいずれも「個人」と規定されています。このため、原則として「法人」に遺贈しても相続税の対象とはなりません
しかし、このような税法の規定を悪用して、個人ではない法人等に財産を遺贈して租税の回避を図る場合があります。そこで相続税法では、次の団体や法人については個人とみなして相続税を課税しています。

1 人格のない社団及び財団
2 持分の定めのない法人(その遺贈により、その遺贈者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税の負担が不当に減少する場合に限る
3 特定一般社団法人又は特定一般財団法人(相続税法第66条の2第1項)

3については、一般社団法人等を悪用した課税逃れが横行したことから、平成30年4月1日以後、新たに規定されました。
このような特殊な法人等に遺贈した場合は、当該法人は個人とみなされますので、相続税の納税義務者になります。
しかし、一般の会社等の法人が遺贈等で財産を取得した場合は、その財産については相続税の対象とはなりません。なお、無償で財産を取得していますので、遺贈された財産は法人の益金の額に算入され、法人税の課税対象となります。
具体例を出して説明します。
法定相続人は甥姪の4名。相続財産は預金のみで2億円。遺言で甥姪には各1千万円、法人A(一般法人で被相続人等の同族法人に該当しない)に1億6千万円を遺贈するという遺言書があったとします。
このような場合、基礎控除額が相続人4名で5,400万円であり、遺産の総額が基礎控除額を超えることから相続税の申告が必要では?と考えるかもしれません。しかし、法人Aに遺贈した1億6千万円は相続税の課税対象になりません。このため、相続税の課税対象は4,000万円で基礎控除額を下回ることから、相続税の申告は不要です
では、上記の例で法人Aに遺贈した財産が土地であった場合はどうなるでしょうか。
相続税の計算は、同じ内容です。基礎控除以下のため申告の必要はありません。法人Aの法人税の計算では、益金に算入される土地の価格は、相続税評価額ではなく時価となります。一般的には相続税評価額は時価より低くなりますので、益金に算入される金額は1億6千万円より多くなる場合が多くなるでしょう。
また、不動産について値上がり益がある場合は、みなし譲渡による譲渡所得の課税がされます。被相続人が譲渡したことになりますので、被相続人の準確定申告を提出します。納税は甥姪4名で負担することになります。

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