今回はCF(キャッシュフロー)計算書の計画づくりについて見ていきます。
前回まで利益計画とBS計画について見ましたが、利益計画とBS計画が出来ていればCF計算書はそれらの数字をもとに作成することが出来ます。
基本的には、利益計画値に対して、BS項目(売上債権、棚卸資産、仕入債務など)の増減調整を加えていくだけだからです。
なので、CF計算書の計画値自体はExcelに自動計算させられるため、計算書の作り方よりも、どちらかというと計算結果(計画見込値)の検証の方が重要です。
BS計画で、計画の構成要素は事業に関わる重要なものだけに絞って考えました。
より正確なBSを作るのが目的ではなく、あくまで計画値のシミュレーションが目的だからです。「事業に関わる重要なもの」とは、具体的には
・運転資金(売上債権+棚卸資産-仕入債務)
・設備投資・その他事業投資(固定資産)
・資金調達・返済額(借入金)
の3つでした。これら以外の要素(たとえば、未払金、前払費用など)は、計画時は基本的には損益と収支の認識タイミングが同じと考えて、前期実績値と同じで設定しました。
したがって、CF計算書においても、その他資産やその他負債の部分は利益とキャッシュのズレは発生しない前提で計画値が作られます。
つまり、CF計画も次の項目だけに限定して考えることができます。
【営業CF】税引前利益-法人税等支払+減価償却費+運転資金の増減
【投資CF】設備投資額
【財務CF】借入の増減
結局、これらの項目はすべて、これまで見てきたPL計画とBS計画に含まれている項目で、Excelに自動計算させることができます。
<CF計画の作り方(自動計算のさせ方)>
そんなわけで、CF計画値の作り方自体はそんなに難しくはありません。
どんな仕組みで計算させるか、を押さえておけばよいでしょう。
【営業CF】
・税引前利益と減価償却費はPL計画の値をそのまま転記
※当期に支払う法人税等は、前期の未払法人税等と中間納税で支払う分
(当期の法人税等(PL)から未払法人税等(BS)を引いた部分)
・運転資金の増減:売上債権の増減(前期-当期)+棚卸資産の増減
(前期-当期)-仕入債務の増減(当期-前期)
・法人税等支払:前期「未払法人税等」(BS) + 当期「法人税等」(PL)
- 当期「未払法人税等」(BS)
【投資CF】-設備投資額
※BSの固定資産残高の差額と減価償却費からも想定は可能だが、設備投資計画から設備投資予定額そのものがわかるのであれば、それを使った方が早い
【財務CF】借入予定額-借入返済額
※増減だけであれば、BSの借入残高の差額だけでも計算はできるが、できれば総額で表示したいので、設備投資計画で借入予定額を設定しているのであれば、その値と年間の借入返済予定額をそれぞれ使った方がよい
このような形で、利益計画とBS計画(とその前提となる設備投資計画)があれば、CF計画は自動計算させることが出来ます。
なお、ここで紹介している計画上では、財務CFにおいて、配当とか増資、自己株式の取得といったものは考慮していません。
そこまで入れることも可能ですが、より複雑な計画になりますので、ここでは、営業活動(運転資金、設備投資、借入見込)によるCFへの影響をシミュレーションしたいというのが主目的のため、複雑な要素はなるべく省いています。
<CF計画の検証>
最終的にはこのCF計画の数値をみて、全体的に無理のない計画になっていないかを判断するようにします。
変数として設定した次の5つの項目について、資金の流れ検証します。
キャッシュフローが回っていかないようなシナリオや、適正な現預金残高が確保できないようなシナリオの場合は、前提となる変数の設定を考え直したりします。
例えば、運転資金に大幅にキャッシュが食われているようであれば、運転資金回転日数をもっと大幅に短縮できないか、といった検証や設備投資額が大きく、資金が回っていくか心配な場合であれば、借入額をもう少し増やす計画にできないか、あるいは同じ借入額でも借入返済期間をもう少し長く設定できないか等を現預金残高とその増減を見ながら検証します。
少し高めの目標設定は必要ですが、資金が回らないような計画は無理がありますので、最低限の現実性は確保できるようCF計画の内容も見ながら、計画をまとめるようにしましょう。
次回も引き続き、CF計画を見ていきます。
PLやBSと同じように、作った計画値を図解します。
プレゼン用という意味もありますが、シミュレーションの際に、変数の値を変えたときに、図の形がどう変わっていくか、視覚的にわかるとよりイメージがしやすいので、そういう意味でも図解は効果的です。