会計人のためのExcel活用術(37)

会計データの編集で押さえておきたい計画シミュレーション(BS①)

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 今回はBS(バランスシート)の計画づくりについて見ていきます。
 利益計画を作るのは一般的ですが、BS計画までつくっている会社はそれほど多くありません。逆にいうと、会計の専門家が、計画づくりの場面でより存在感を発揮しやすいところになりますので、概要だけでも押さえておくと重宝します。

 計画時においては、BSの構成要素は事業に関わる重要なものだけに絞って考えます。
 計画ですので、細かい項目は前期実績と同じ数値として、あくまで事業に関わる大きな要素だけに限定します。
 そうすれば、BSも限られた変数の設定で、計画数値を自動計算させることができます。自動計算ができると、Excel上で様々な条件設定を動かしてシミュレーションを行うことが出来ます。
より正確なBSを作るのが目的ではなく、あくまで計画値のシミュレーションが目的なので、変数は重要なものだけに限定した方が扱いやすくなります。

「事業に関わる重要なもの」とは、具体的には

・運転資金(売上債権+棚卸資産-仕入債務)
・設備投資・その他事業投資(固定資産)
・資金調達・返済額(借入金)

の3つです。事業への影響度の大きさを考えると、これらは考慮する必要がありますが、これら以外の要素(たとえば、未払金、前払費用など)は、計画時は基本的には損益と収支の認識タイミングが同じと考えておきます。
 決算時にズレが発生するといっても1~2か月なので、計画時にこの細かいズレをわざわざ認識することはせずに、前期実績と同じ値としておきます。

<BSの上側部分>
 まずは、BSの上側(流動資産、流動負債)の計画値については、「運転資金(売上債権+棚卸資産-仕入債務)」が決まることで、確定してきます。
 その他の流動資産・流動負債は、とりあえず前期と同じ値にしておきます。

 運転資金(売上債権+棚卸資産-仕入債務)は、運転資金回転日数(売上の何日分かの指標)から逆算します。
 想定する回転日数に、利益計画で作った売上高(予測)を365で割った平均日商を掛ければ、それぞれの期末残高(想定)を算定することが出来ます。

<運転資金(売上債権、棚卸資産、仕入債務)計画値の算定イメージ>

 回転日数は、前期実績の日数、あるいは取引条件と照らした場合の想定日数、目標とする日数など、いくつかの仮定日数を設定して、それによって計画値がどう動くかを検証します。

 まず前期の回転日数の実績値を算出してみます。
 売上債権、棚卸資産、仕入債務の前期末残高を前期の平均日商(売上高の1/365)で割って回転日数を次のように算出します。

 計画上、このまま前期実績と同じ日数を採用するのも1つですが、通常、利益計画では売上が徐々に伸びていく形が多いと思いますので、同じ日数の想定でいくと売上の増加に比例して、運転資金が増加していくことになります。
 そこで、例えば、「売上債権回転日数」を前期実績よりも2日短縮させて「64日」、棚卸資産回転日数を1日短縮させて「31日」、仕入債務の回転日数のほうは前期実績と同じ「40日」といったように、この日数を動かしてBSと現預金残高がどう動くかを検証します。

<BSの下側部分>
 BSの下側(固定資産、固定負債)の計画値については、
・設備投資・その他事業投資(固定資産)
・資金調達・返済額(借入金)
 の計画値が決まることで決まってきます。
 固定資産と借入金は、設備投資(額)の予定と、調達予定(借入金、自己資金の割合)で決まってきます。
 例えば、特に大きな設備投資がなく、新たな借入予定もないのであれば、計画値は
 固定資産=前期末固定資産残高▲当期減価償却費
 借入金=前期末借入残高▲当期返済予定額
 となってきます。
 新らたな設備投資、借入(借入額、返済額)の予定があれば、それを加味する形で
 固定資産=前期末固定資産残高+設備投資額▲既存減価償却費▲設備投資の減価償却費
 借入金=前期末借入残高+借入予定額▲既存返済予定額▲新たな借入の返済予定額
 となってきます。

 いずれにしろ、固定資産(投資額)と借入の見込額の設定によって、BSの下側が決まっててきて、全体のBSの計画値が決まってきます。

 これでBSの計画値は作成できますが、数字を作っただけではあまり意味がありません。
 全体のバランスが適正なのかを検証する必要があります。
 財務バランスが適正かどうかをみる指標としてはいくつかありますが、代表的なものは、金融機関のスコアリングシートなどでもよく使われる次の2つかと思います。
・自己資本比率: 純資産/総資産
・ギアリング比率: 有利子負債(短期・長期借入金・社債)/純資産

 運転資金回転日数の想定や、投資額、借入金の割合などをいろいろ動かしてみて、それによって、これらの値がどう変化するかを検証します。

 BSの計画を作ることは難しそうに思えますが、変数を重要なものだけに限定すれば、計画値を作ること自体は難しくありません。
 変数を限定すればExcelで自動計算させられます。 
 自動計算させることができれば、変数の値を変えていろんな想定でのシミュレーションを行えます。
 利益計画とあわせてBS計画もExcelを使って検証してみましょう。

次回も引き続き、BS計画のところを見ていきます。
PLのときと同じように、せっかく作った計画値は、図にしないと勿体ないです。
シミュレーションによって、図の形がどう変わっていくかも一緒に提示できるようにしましょう。

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