敷地内に複数の家屋がある場合の居住用の3,000万円の特別控除

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 一つの敷地(土地は一筆とは限りません)の中に複数の家屋があります。土地は一人の所有で、家屋は各居住者が所有しています。これらの土地建物を全て売却した場合、居住用の3,000万円の特別控除は土地のどの範囲まで適用できるのでしょうか。
 基本的には土地の所有者が居住していた家屋の敷地に相当する部分が特別控除の対象です。では、複数の家屋を渡り廊下等で接続し、土地の所有者が一体として利用していた場合は判断が変わるのでしょうか。
 渡り廊下等で接続された複数の家屋を所有者が利用していたのであれば、全て居住用として特別控除の対象としてよいでは?と考えてしまうかもしれません。しかし、令和2年6月19日裁決では、そのように取り扱うことは否定されています。
 土地はAの所有で、当該土地の上にそれぞれA及びB(Aの子供)所有の2棟の家屋(甲家屋及び乙家屋)があります。2つの家屋は、規模、構造、設備等の状況から、それぞれ独立した家屋として利用可能です。2つの家屋は2階部分を渡り廊下で接続しており、Aは自己所有の甲家屋を主として利用していましたが、B所有の乙家屋も利用していました。
 納税者は、甲家屋及び乙家屋は併せて一構えの一の家屋であり、請求人は甲家屋及び乙家屋を居住の用に供していたから、本件甲及び乙家屋敷地は、全て居住用財産の3,000万円の特別控除が適用される請求人の居住用財産に当たると主張しました。
 しかし、審判所は以下のとおり、乙建物の敷地部分については特別控除の適用はないと判断しました。

 居住用財産特別控除規定は、その適用対象となる家屋について、個人がその居住の用に供している家屋を二以上有する場合には、これらの家屋のうち、その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限る旨規定している。
 二以上の家屋が併せて一構えの一の家屋であると認められるかは、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等主観的事情は二義的に参酌すべき要素にすぎない。これらの家屋がその者及び親族等によって機能的に一体として居住の用に供されているのみでは不十分といえ、家屋の規模、構造、設備等の状況から判断して、いずれか又はそれぞれが独立の居住用家屋としては機能できないものでなければならない。
 したがって、二以上の家屋がそれぞれ独立の居住用家屋としての機能を有する場合には、これらの家屋を併せて一構えの一の家屋であるとは認められず、その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限り、居住用財産特別控除規定の適用対象となるというべきである。(一部抜粋)

 なお、居住用部分の土地の範囲が不明確な場合には、特段の事情が存しない限り、各家屋の建築面積の割合により特別控除が適用される土地の面積を算定するのが相当であると判断しています。

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