事業譲渡の特徴

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中小・零細企業M&Aについて事業譲渡の特徴を教えてください。
下記となります。


(※)QⅡ①-23の回答を参照してください。あくまで原則論です。

 従来実務における発想は、売主は不要な事業だけを売却したい、買主は対象会社のすべての資産を所有することは不要、と考えている場合、事業譲渡スキームが選択されていました。税務上は売主の各資産、各負債を購入(売却)するため、当該移転資産・負債の譲渡益に対して法人税課税がなされます。差額はのれん認識され60か月均等償却することが可能です(平成29年度税制改正、負ののれんの場合、益金算入されます)。消費税の課税取引に該当するので、課税資産と非課税資産を一括譲渡した場合には、合理的な区分をします。事業譲渡においては最終契約書において移転資産が明記されているので、課税、非課税の区分は容易です。
 上記が本来的な説明ですが、下記のように、傾向が変わりました。
 一部の実務家は率先して事業譲渡を選択します。簿外債務の引継ぎをしたくないというのが最大の理由です。昨今の中小・零細企業M&Aではクロージング後の簿外債務の顕在化が非常に問題になっています。最終契約書に表明保証条項及び補償条項が明記されていますが、中小・零細企業では担保されません。悪意ある(民法上の意味で)売主はクロージング後、消息を絶ちます。簿外債務を売りつける意図が初めからあったというわけです。法務DDで詳細まで把握することも現実的には極めて困難であり、少しでも懸念があれば、事業譲渡スキームを選択するか、破談すべきです。
 そして、さらに最近は下記のような認識が一部の専門家でなされています。
 QⅡ①-23の通り、リスク遮断については、法実務では簡単に割り切れるものではないことに留意が必要です。この点については、類書においてかなり誤解の多い箇所になります。例えば、特定の不動産に土壌汚染がある場合、その回復、あるいはその回復に係る費用分の譲渡価格減少交渉、そもそも当該不動産は譲渡除外する等のリスク遮断は可能です。しかし、事業については特定の一部を切り取り譲渡したとしても、潜在債務や訴訟リスクは事業全体に係るという考え方も法律家には存在するため、単純に切り捨てられるものではありません。最終契約書で責任範囲を限定しても上記について同様のことがいえます。
 すなわち、事業譲渡を積極的にとる理由はタックスメリットがある場合に実務では限定されます。

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