自己株式又は出資取得におけるみなし配当計算事例

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 自己株式又は出資取得におけるみなし配当計算の具体的計算事例を教え
てください。
下記となります。

 会社法上、自己株式取得は純資産を株主交付する取引と考えます。法人税法上もそれに則り、資本等取引として扱います。
 なお、自己株式取得において低額譲渡した場合、種々の見解(例えば、損益取引と資本等取引との混合取引ではないか、等々)がいまだあるようですが、課税実務上は資本等取引として扱って全く問題ありません。
 「平成19年版税務相談事例集」(大蔵財務協会)ではこの点につき「自己株式の売買価額を時価より低額としたことが、何らかの利益移転を目的とした損益取引と資本等取引とを抱き合わせした結果であると認められる場合には、売買価額を時価に引き直したところにより課税関係が整理させることもあると思われます。」と記載があり、未だに一部の実務家を困惑させているようです。
 しかし、自己株式の処理に関しては資本等取引とすることが会社法において整理され、それに伴い法人税も整合性をとる取扱いをしたことで従来の考え方は現在はないものと考えて問題ありません。現に、その後の税務相談事例集ではこの記述は削除されています。
 租税法においては、自己株式取得取引は2つの取引で構成されていると考えます。
1)株主が会社に拠出した資本の額を現時点の株主に返還する取引
2)利益の内部留保額を株主に還元する取引

(前提)
・発行法人での資本金等の額が8,000、利益積立金額が40,000。
・法人株主は当該法人(発行済株式総数100株)のうち20株を1,600で当初購入(取得原価)。
・今回、当該20株を24,000で購入。

 (STEP1)
 上記1)の算式が以下のとおりです(法令8①二十)。
 自己株式取得直前の発行法人の資本金等の額×按分割合(※)

一方2)の金額は次の算式で計算します(法令9①十四)
  株主に交付した額-1)の金額
  24,000-1,600=22,400
 です。
 したがって、税務仕訳では

となります。
 (STEP2)
 しかし、会計は24,000まとめて処理します。下述の会計基準では株主資本と利益の内部留保部分を区分することを要請しておりません。
 会計仕訳では

 となります。
 自己株式に係る会計処理を定めた「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」に規定があり、それに則った処理です。

<自己株式の会計処理及び表示>
自己株式の取得及び保有
7.取得した自己株式は、取得原価をもって純資産の部の株主資本から控除する。
8.期末に保有する自己株式は、純資産の部の株主資本の末尾に自己株式として一括して控除する形式で表示する。

 税会不一致が生じるため税務調整が必要になります。具体的な申告調整は下記となります。
(申告調整STEP1)
 いったん24,000全額が利益積立金額から拠出されたものとして処理する。

【別表四】

【別表五一(一)】

(申告調整STEP 2 )
 過剰に控除した利益積立金額24,000を足し戻します。
【別表四】

 みなし配当の認容分は「配当・社外流出」です。
(申告調整STEP3)
 資本金等の額を最終調整します。

【別表五一(一)】

(譲渡法人側の処理)
  下記のようになります。

 先ほどの発行法人側の資本金等と利益積立金額部分の区分については下記に規定されています。
  1,600…株式の譲渡収入(法法61の2①)
  22,400…みなし配当(法法24①五)

(法人税法第61条の2第1項)
  内国法人が有価証券の譲渡をした場合には、その譲渡に係る譲渡利益額(第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。)又は譲渡損失額(同号に掲げる金額が第一号に掲げる金額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。)は、第62条から第62条の5まで(合併等による資産の譲渡)の規定の適用がある場合を除き、その譲渡に係る契約をした日(その譲渡が剰余金の配当その他の財務省令で定める事由によるものである場合には、当該剰余金の配当の効力が生ずる日その他の財務省令で定める日)の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。
 一 その有価証券の譲渡に係る対価の額(第24条第1項(配当等の額とみなす金額)の規定により第23条第1項第一号又は第二号(受取配当等の益金不算入)に掲げる金額とみなされる金額がある場合には、そのみなされる金額に相当する金額を控除した金額)(太字筆者)
 二 その有価証券の譲渡に係る原価の額

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