「庭内神し(テイナイシンシ)」とは、屋敷内にある神の社や祠等といったご神体を祀り日常礼拝の用に供しているものをいい、ご神体とは不動尊、地蔵尊、道祖神、庚申塔、稲荷等で特定の者又は地域住民等の信仰の対象とされているものをいいます。地元住民の日常礼拝の対象となっているものだけではなく、「特定の者」すなわち一族のみの祀りの対象までもが「庭内神し」及びその敷地として認められています。
元々国税庁は、「庭内神し」の移動可能性を考慮し、これらの「庭内神し」の敷地については、課税の対象としていました。しかし、東京地裁平成24年6月21日(平成22年(行ウ)第494号)の判決を受けて、「庭内神し」の敷地についても非課税とするように取り扱いを変更しています。
「庭内神し」として認められる要件としては、①「庭内神し」の設備とその敷地、附属設備との位置関係やその設備の敷地への定着性その他それらの現況等といった外形、②その設備及びその附属設備等の建立の経緯・目的、③現在の礼拝の態様等も踏まえた上でのその設備及び附属設備等の機能の面から、その設備と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲の敷地や附属設備であるか、という点が挙げられています。
では、敷地の一部に「庭内神し」がある場合、評価単位はどのようになるのでしょうか。
まず、自宅の敷地(宅地)の一部に庭内神しがあり、その部分も宅地であったとします。庭内神しがある部分を他人に貸し付けているという事は通常ないので、隣接する宅地を共に自用地として利用していることになります。このため、自宅敷地、庭内神しの敷地と利用状況は異なりますが、評価単位は一体となります。なお、庭内神しの敷地は多くの場合、分筆等されていないため、その敷地部分については現地で簡易に実測し、地積を確定する必要があります。
次に庭内神しのある部分が宅地以外の地目の場合はどうでしょうか。
庭内神しの敷地部分と自宅敷地部分の規模及び位置関係にもよりますが、通常は庭内神しの敷地部分は自宅敷地に対してごく一部を占めるにすぎない場合が多いようです。その場合に、地目の違いを捉えて別評価とすることには疑問が生じます。また、 財産評価基本通達7において、一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価する、との規定があります。このことから、自宅敷地の一部に地目が異なる庭内神しがあったとしても、別評価とせず、一体評価をするのが妥当と考えます。但し、庭内神し部分が大きく、自宅部分とは一体として利用されている一団の土地とは考えられない場合には評価単位は別になると思われます。
以上のことから、庭内神しのある敷地の評価は、原則として庭内神しを含めた敷地全体で奥行価格補正、不整形地補正などを適用して評価単価を算出し、庭内神しの敷地部分を除いた敷地面積を乗じて評価額を算出することとなります。
