「ピボットテーブル」の機能を使った経理業務の現状調査として、今回は支払日の分散状況について見ていきます。
取引先が増えてきて、月に何回も支払業務が発生している会社がよくあります。
取引先の支払条件はさまざまだからです。月末締め翌25日払いの会社もあれば、20日締め翌月末日払いの会社もあります。
すべて相手の取引条件にあわせて支払っているため、「五・十(ゴトウ)日」がすべて支払日になっているという会社も結構あります。
支払業務は経理にとって、割と面倒な仕事です。
口座誤り、桁間違いなどのミスが絶対に許されないため、かなりの神経を使います。
一覧表を印刷してダブルチェックをした上で、必ず決裁者へ申請し承認するという手続きをとります。
件数が少なくても一連の手続きは変わらないため、支払日が分散されているとその分だけ経理の工数は増えていくことになります。
出来るだけ支払日はまとめたほうが、経理の生産性は上がりますので、経理業務の改善の1つとして「支払日の集約」を検討することがよくあります。
その際、単に「支払日を集約しましょう」と言っても「無理でしょう」と言われるのがオチです。そこで、現状がどうなっているのかを「手間をかけずに」把握するのに「ピボットテーブル」を活用します。ポイントは「手間をかけずに」のところです。
通常の会計業務が忙しい中、時間のかかる+αの作業は後回しにしてしまうのが普通だからです。
実際、どんな感じで「ピボットテーブル」を活用するのかを見ていきましょう。
たとえば、買掛金の元帳をエクセルにダウンロードしてきます。
(期間は直近1年分か、取引件数が多い場合は、とりあえず直近の3か月分など)
会計ソフトによって、項目は違うでしょうが、元帳の場合だと「日付」、「補助科目」、「相手科目」、「借方金額」、「貸方金額」といった項目がダウンロードされてくると思います。
このダウンロードしてきた内容そのまま「ピボットテーブル」に読み込ませます。
新しいシートが出来ますので、右側にある「ピボットテーブルのフィールド」を編集して、支払日の状況を調べます。
この例では、まず「伝票日付」を「行」の欄に持ってきます。
次に「値」の欄に「借方金額」を持ってくると、次のような日別の金額集計表を自動で生成してくれます。
ただ、いま調べたいのは金額ではなく、「件数」なので、これを件数の集計に切り替えるようにします。
「値」欄の「借方金額」をクリックして「値フィールドの設定」をクリックします。
次のポップアップ画面で「値フィールドの集計」がデフォルトでは「合計」となっているので、これを「個数」に変更して「OK」とすると日別の「件数」の集計に切り替わります。
買掛金元帳の日別の件数になりましたが、これをさらに、支払件数だけを集計した表にするために、「買掛金/現預金」の仕訳(件数)だけに限定します。
買掛金元帳には、「仕入/買掛金」、「買掛金/支払手形」といった仕訳も含まれているので、これらを除外します。
「フィルタ」という欄があるので、ここに「相手科目」をドラッグ&ドロップします。
相手勘定科目の中から、支払処理で使っている科目(「普通預金」や「当座預金」)だけを選択して、OKします。
これが、買掛金の支払日別の件数になりますので、どれくらい支払日が分散されているのかを確認します。
現状を件数で把握した上で、件数の少ない支払日のものは集約して、月2回くらいの支払日にまとめられないか検討します。
表だけでなく、グラフを使って視覚化するのも有効です。
たとえば、この例では、末日の件数が一番多いので、SUM関数を使って末日支払の件数を集計して、「末日」と「それ以外」の割合を円グラフにしてみます。
この例では、大体半分くらいの件数が末日支払でしたので、たとえば15日と末日の月2回程度に集約できないか、といったことを実際の件数を見ながら考えるようにします。
該当日の「値」をダブルクリックすることで、その明細も見ることができます。
たとえば、4月10日の支払先として、具体的にどこがあるのかを見たいときには、4月10日の行の値(4件)をダブルクリックすれば、その明細(4件の中身)が別シートに展開されますので、内容を確認することができます。
件数の少ない支払日については、これで中身を確認して、該当取引先の担当者に支払日の変更を打診してもらう、といった具体的アクションが可能となります。
また、買掛金だけでなく、経費支払についても同じように「未払金」など使用している科目の元帳から、支払件数を調査してみます。
元帳でなくても、仕訳日記帳を使っても同じような集計はできます。
仕訳日記帳の場合、いろんな科目が入り混じってきますので、「借方科目」と「貸方科目」の両方でフィルタをかけるようにします(借方科目:買掛金、貸方科目:普通預金or当座預金 等)。
毎週のように支払処理を行っているな、と感じる場合は、まずは「ピボットテーブル」を使って、支払日別の件数を計測して、実態把握するところから始めましょう。
イメージだけで考えるよりも、どこがネックになっているのかが数字で見えてきますので、より具体的な提案が可能となります(この取引先と支払日の交渉はできないか等)。
是非、いまあるデータを活用して、提案につなげましょう。
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