相続持分を譲渡した際の課税関係

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 相続が開始した場合、法定相続人は被相続人の財産について自己の法定相続分に基づく権利を有します。では、自己の相続分について「相続持分の譲渡」が出来るのはご存知でしょうか。

 相続が発生して遺言書がない場合には、各相続人は遺産分割協議等により実際の相続分を決める必要があります。しかし、他の相続人との遺産分割協議が煩わしい場合や早期に金銭を取得したい場合などには、自己の相続持分を譲渡することが可能です。相続持分の譲渡は、他の共同相続人に対してだけではなく、第三者に対しても行うことができます。また、譲渡は有償、無償どちらでも可能です。

 無償で譲渡した場合は、持分を譲渡した相続人は、相続放棄をしたのと同等となりますが、他の相続人の持分には差が出ます。仮に相続人が子供3人(A・B・C)でCが相続放棄した場合は、A及びBの相続分は各1/2となりますが、CがBに対して持分を無償で譲渡すれば、Aの相続分は1/2、Bの相続分は2/3となります。なお、相続持分を無償譲渡した場合でも、債務については譲渡できませんので、債権者から請求があった場合、Cは元の自己の持分に応じた債務の弁済に応じる必要があります。

 では、相続持分の譲渡があった場合の課税関係はどうなるのでしょうか。なお、持分譲渡は、相続持分の一部についても行えますが、内容が複雑になりますので全部を譲渡とした場合について説明します。

 共同相続人に対して無償で譲渡した場合、相続分の譲渡者は相続財産について権利の主張が出来なくなるため、譲渡者は相続税の申告は必要ありません。譲受者は自己の持分と譲り受けた持分に応じて相続税の申告が必要になります。譲渡者、譲受者とも所得税、贈与税の課税はありません。

 共同相続人に対して有償で譲渡した場合、譲受者はその譲渡対価(通常は金銭)について相続税の申告を行い、譲受者は譲渡対価について代償金を支払ったのと同等に取り扱い申告を行います。無償の場合と同様に譲渡者、譲受者とも所得税、贈与税の課税はありません。

 共同相続人以外の個人へ無償で譲渡した場合、一旦譲渡者が相続したものとして譲渡者が相続税の申告を行う必要があります。譲受者は譲渡者から贈与により財産を取得したとして、贈与税の申告が必要です。相続税の申告は必要ありません(最高裁H5.5.28判決参照)

 共同相続人以外の個人へ有償で譲渡した場合、無償の場合と同様に、一旦譲渡者が相続したものとして譲渡者が相続税の申告を行う必要があります。その後、財産を譲渡したとして値上がり益については、譲渡所得の課税が行われます。譲渡時期は、相続持分の譲渡が行われた時点です。所得費については相続により取得したものとして計算します。譲受者については、適正価格で持分を取得していれば課税は発生しません。なお、法人に持分を無償譲渡した場合は、所得税法59条のみなし譲渡の規定が適用されます。なお、相続持分を譲渡した場合の譲渡所得の取扱について国税庁は詳細を公表していませんので、文中の記載内容は、筆者の個人的な意見です。

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