前回まで、Excelグラフを活用した会計データの分析のうち、「儲かっているか?(PL)」、「おカネは足りているか?(CF)」について、見てきました。
今回はもう1つの視点である「何か異常はないか?(BS)」について見ていきましょう。
「何か異常がないか?」は、正常な状態のときの値を基準値として、それとの比較で検証します。
異常やゆがみはバランスシートに現れます。
(1)取引サイクルを検証する
まずはバランスシートの上側で、取引サイクルに異常がおきていないかを検証します。
運転資金、いわゆる売掛金、在庫、買掛金という取引がまだ完了していない途中状態の残高が適正かどうかをチェックします。
運転資金は、売上が増えれば、それに比例して大きくなっていきますので、金額そのもので見るよりも、残高を1日当たりの平均売上高で割った「回転日数」を検証します。
日数に変換すれば、実際の取引条件の日数と照らして比較できます。
毎月だと売上の変動があり、変化が掴みにくいので、3カ月単位くらいで取引サイクルを見るのがよいです。
まず、残高推移表から売上高、売上債権、棚卸資産、仕入債務の毎月の残高を持ってきて、下記のように四半期(3か月)ごとの平均値をとります。
次に、3か月平均の売上高を「30」で割って、平均の日商を出します。
売上債権、棚卸資産、仕入債務の平均残高をこの日商で割って、四半期ごとの運転資金(売上債権+棚卸資産-仕入債務)の回転日数を出します。
これを棒グラフにして、運転資金回転日数が延びていないかをグラフで検証するようにします。
ヘッダー行と運転資金回転日数の行を選択して、挿入→集合縦棒を選択します。
グラフで比較することで、取引サイクルに異常があれば、すぐ気づくことができます。この例では、運転資金回転日数が「49.5日」→「59.5日」に長期化していることがわかります。
さらに、運転資金回転日数の会社としての基準値があれば、それもグラフ上に一緒に表示することで、基準からの乖離の程度を合わせて検証することができます。
たとえば、実際の取引条件(末締め翌々月払い等)や平均在庫日数をもとに基準となる運転資金回転日数を「50日」と設定していたとします。
先ほどの表に、「標準回転日数」として、「50日」という行を1行追加して、これもグラフにします。
先ほどと同じように運転資金回転日数は集合縦棒に、標準回転日数の方は折れ線グラフにすると、比較しやすくなります。を選択して、挿入→集合縦棒を選びます。
複合グラフの作り方はいくつかやり方がありますが、手っ取り早いのはグラフの中に、「組み合わせ」という項目があり、その中に「集合縦棒-折れ線」があるので、これを選択します。
これで基準となる線が追加された形になります。このままでもよいのですが、基準線をグラフの端まで上して表示した方が見た目がよいので、線を端まで伸ばす加工を入れます。
折れ線グラフを選択して、右クリック→「近似曲線の追加」を選択します。
「予測」の中の「前方補外」と「後方補外」にそれぞれ「0.5」と入力します。
いわゆる、前方と後方にどれくらい線を伸ばすかの指定です。開始位置が左端になるのが、「0.5」です。
端までが点線で表示されるので、あとは線の種類を実線または点線どちらかにそろえて、「線形(標準回転日数)」という凡例表示を消せば、グラフの出来上がりです。
3ヶ月ごとの推移と、基準値と比較を視覚的に確認するようにします。
運転資金回転日数で取引サイクルの歪みを確認する例でしたが、もっとポイントを絞って、売上債権回転日数や棚卸資産回転日数の変化を確認するのもありです。
より課題が大きい科目があれば、その回転日数を検証するようにしましょう。
今回は、「何か異常がないか?」の検証として、バランスシートの上側で取引サイクルをチェックする例を見ました。
次回も、引き続き「何か異常がないか?」の検証について見ていきます。
今度はバランスシートの下側を使った分析例について、ご紹介する予定です。
会計データの価値を最大限引き出すExcel活用術
<清文社>