前回に続き、「おカネは足りているか?」(CF分析)について見ていきます。
前回、「比較」と「分類」の切り口を使った例を見ました。今回も引き続き、その他の分析例を見ていきます。
(1)キャッシュフロー増減を検証する
前回、キャッシュフロー計算書の増減状況を棒グラフにする方法を見ましたが、今回はウォーターフォール図を使った分析について見ていきます。
キャッシュフロー計算書の中で分析の中心になるのは、「営業活動によるキャッシュフロー」( 以下「営業CF」)だと思います。
「投資活動によるキャッシュフロー」が動くのは、設備投資や固定資産の売買のときくらいですので、グラフを使って検証するまでもありません。
同じように、「財務活動によるキャッシュフロー」についても、通常月は借入金返済の動きくらいですので、こちらもわざわざグラフで確認する必要もありません。
やはり、複雑な動きをするのは営業CFですので、この部分だけをピックアップして増減状況をグラフで検証します。
まずは、会計ソフトからキャッシュフロー計算書の内容をエクセルへダウンロードしてきます。
そのままだと項目が多すぎるので、いくつかの括りにまとめた上でグラフ化します。
まず、先頭の「税引き前利益」から「売上債権の~」の前までの部分の金額をまとめます。この部分は≒「営業利益+減価償却費」となっており、いわゆる「業績」によって、いくらお金を稼いだのかを確認します。
次に、「売上債権の増減」、「棚卸資産の増減」、「仕入債務の増減」の部分をまとめます。いわゆる「運転資金の増減」を示している部分で、「取引条件」によってお金がどれくらい食われているかをこの部分で見ます。
あとは、「小計」の前までの部分は「その他」として全部括ってしまってもよいですし、「未払消費税(預り消費税)」の部分は分けて表示するのでもOKです。
「小計」以下は、「利息及び配当金の受取額」と「利息の支払額」を1つの括りにまとめて、「法人税等の支払額」はそのままとします。
いくつかの分類に括ったら、これを「ウォーターフォール図」にします。
Excel2016からは「ウォーターフォール図」そのものを作成できるグラフ機能が標準で搭載されるようになったので、非常に作成が簡単になりました。
Excel2013以前は、積み上げ棒グラフを使いつつ、要素を非表示にするといった工夫が必要でしたが、それらが一切不要になり、ボタン1つで作成できるようになりました。
作り方は非常に簡単で、表部分を選択して、グラフの種類の中に「ウォーターフォール」というのがあるので、これを指定するだけです。
「営業CF」が最終値(各項目を増減した合計値)であることをグラフ上で指定して、色を調整して、見た目を整えたら出来上がりです。
グラフ化することで、数字だけでは見えにくかった、どの要素でキャッシュフローが減っているのかを視覚的に把握することが出来ます。
利益がお金になっていない原因を検証しやすくなります。
(2)「傾向」で検証する
前回、「比較」の視点を使って、月末時点における現預金残高が十分かを検証しました。
今回は、「傾向」の視点を使って、月中の現預金の動きを検証する方法を見ます。
通常、月次決算では月末の現預金残高は確認できますが、日々の残高の動きまではわかりません。
そこで、会計ソフトから、日々の現預金残高の推移データを取得して、その推移をグラフ化します。月末では十分な残高でも、月中においても十分とは限りません。
これもグラフ自体は単純なものですが、数字だけでは気づきにくい特徴をつかむのに、とても役立ちます。
まず、会計ソフトから普通預金の前月の1か月分の日々の残高推移を出力します。
会計ソフトによって「日次残高推移表」とか、「日計推移表」、「日別残高推移表」など呼び名はそれぞれありますが、勘定科目別に日次の借方、貸方、残高の動きを一覧にした表です。この普通預金の推移をエクセルシートに出力します。
次に、貸方の数字をマイナスにします。グラフにしたときに入金(借方)をプラス表記にして、出金(貸方)をマイナスに表記したいためです。
列を追加して関数を使って「-1」を掛ける等、方法はいくつかあるのですが、一番手っ取り早いやり方が、適当なセルに「-1」と入力して、このセルをコピー。次に、貸方の数字すべてを選択して、「形式を選択して貼り付け」→ポップアップ画面で、「値」と「乗算」を選択して「OK」を押します。
ここまで出来たら、入出金と残高の推移をグラフにします。
表をすべて選択して、「挿入」→「グラフ」の中の「組み合わせ」の「集合縦棒 - 折れ線」を選べば、入出金と残高の推移をグラフ化することができます。
月中の預金の動きを視覚化することができますので、資金の山と谷が毎月どのあたりに来るのかが、はっきり見えるようになります。
たとえば、この例では、月初と月末の預金残高自体は同じ(30,000,000円)ですが、20日前後に資金の谷が来て、月末には大きな入金と出金が発生しています。
また、月末の状態は入金の棒が、預金残高の折れ線を超えています。
つまり、入金がもしなかったならば、すべての支払をすることが出来なかったことを意味しています。あるいは入金のタイミングを考えて支払をしないといけない状態です。
仮に月末の残高は問題なくても、支払条件を変えるなど、月末の支払のいくつかを後ろにさせてもらうなど、何らかの改善が必要な状況と言えます。
月末残高では見えにくい月中の残高推移は「傾向」の視点でチェックするようにしましょう。
今回は、前回に続き「おカネは足りているか?」の検証例を見ました。
「ウォーターフォール」はキャッシュフローだけでなく、利益の増減を視覚化する際にも使えますので、ぜひ試してみてください。
次回は、「何か異常はないか?」(BS分析)について見ていく予定です。
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