土地評価で減額漏れが多い事項③ 倍率地域の評価

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 土地評価で減額が漏れていることが多い事項についての3回目です。今回は倍率地域の土地評価です。
 
倍率地域の土地評価なんて、固定資産税の評価額に倍率をかけたらいいのだから簡単だ、と考えられている税理士の方も多いのではないでしょうか。しかし、倍率地域の評価は、予想外に難しい場合があります。
 
まず気を付けなければいけないのは、地積規模の大きな宅地の評価の適用漏れです。地積規模の大きな宅地の評価は、市街化調整区域(一部を除く)は適用できませんが、倍率地域だから適用が出来ないという事にはなっていません。倍率地域の場合、

①実際のその宅地の固定資産税評価額に倍率を乗じた評価額
②その宅地が存する地域の標準的な地積規模の1㎡当たりの評価額(具体的には固定資産税の路線価水準)に倍率を乗じ、画地補正、地積規模の大きな宅地の評価等を適用して求めた1㎡当たりの評価額にその宅地の地積を乗じた評価額

①②のいずれか低い金額がその土地の評価額となります。固定資産税の評価においては、地積規模が大きいという理由で減額していない場合が多く、一般的には②の評価額が低くなります。このため地積規模が1,000㎡以上(三大都市圏は500㎡以上)の土地については、単純に固定資産税に倍率を乗じた評価を行っていれば、過大評価となってしまう場合が多くなります。広大地から地積規模の大きな宅地の評価に評価方法が変更になり、適用の有無について判断に迷うことが無くなった反面、適用できるものについて適用しなかった場合には、税理士の責任が明確であるため注意が必要です。

 次に固定資産税評価と相続税などの財産評価基本通達に基づく評価では、現実的に評価単位が異なる点も注意が必要です。

 固定資産税では土地の所有者のみに課税され、借地人には課税されません。また、自用地、貸地、貸家建付地の別で評価額が異なりません。このため、固定資産税では、原則として1筆の土地であれば、実際その土地が自用地、貸地、貸家建付地など複数の利用単位に分かれていたとしても、別に評価することはせず、一体で評価している場合が多くなります。例えば、1筆の土地があり、幹線道路とそこに接続する幅員4m程度の道路に面している角地だとします。1筆の土地の上に、3つの建物があり、幹線道路に面している部分は店舗として貸付(貸家建付地)、その隣(4m道路のみに面している)は自宅(自用地)、更にその隣は貸地で借地人が建物を建築(貸地)しているとします。この場合でも、固定資産税は、納税者からの届出がない場合、1筆の土地として、全て幹線道路に面した角地として評価しています。しかし、国税の場合の評価単位は3つになります。自宅部分や貸地部分は、4m道路の固定資産税の路線価を基に中間画地(一方向のみ道路に接している土地)として評価するのが正しいので、単純に固定資産税の倍率を乗じて評価してしまうと過大評価となるのです。

 評価単位の規定は路線価のみの規定ではなく、土地評価全般についての規定です。このため、倍率地域の評価も、評価単位に応じて固定資産税の評価額を補正して評価するのが正しい評価方法となります。

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