【解説】
適格現物分配による資本の払戻しを行った場合の税務上の処理について
【照会要旨】
乙社は、100%親法人である甲社に対して、乙社の保有するX 社株式(簿価130)を現物分配により交付しました。
この現物分配は、その他資本剰余金120とその他利益剰余金10を原資として行っており、資本剰余金120の減少を伴っていることから、法人税法第24条第1項第4号に規定する資本の払戻しに該当します。この場合の乙社における処理はどうなりますか。
なお、乙社の前事業年度終了時の純資産の額(資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額)は1,200、資本の払戻し直前の資本金等の額は600とします。
【回答要旨】
次の2⑴及び⑵の算式によりそれぞれ計算された金額を資本金等の額及び利益積立金額から減算することとなります。
(理由)
また、適格現物分配とは、内国法人を現物分配法人(現物分配により、その有する資産の移転を行った法人をいいます。)とする現物分配のうち、その現物分配により資産の移転を受ける者がその現物分配の直前において、当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人(普通法人又は協同組合等に限ります。)のみであるものをいいます(法法2十二の十五)。
内国法人が適格現物分配により資産の移転をしたときは、その適格現物分配の直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして、所得の金額を計算することとされており(法法62の5③)、その資産の移転により譲渡損益は発生しないこととなります。
なお、ここにいう資本の払戻し等とは、剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限ります。)のうち分割型分割によるもの及び株式分配以外のもの並びに解散による残余財産の一部の分配をいいます(法法24①四、法令8①十八)。
⑴ 資本金等の額から減算する金額(法令8①十八)
(算式)
資本金等の額から減算する金額 (減資資本金額)=A✖️C分のB (※)
A 資本の払戻し等の直前の資本金等の額
B 資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額又は解散による残余財産の一部の分配により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあっては、その交付直前の帳簿価額)の合計額
C 資本の払戻し等の前事業年度終了の時の純資産の額
※ 1 A≦0 のときは B/C= 0、A > 0 かつ C ≦ 0 のときは B/C= 1 として計算します。
2 少数点以下第3位未満の端数がある場合にはこれを切り上げます。
3 上記算式により計算した金額が、資本の払戻し等により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあっては、その交付直前の帳簿価額)の合計額(この合計額を⑵においてDといいます。)を超える場合には、その超える部分の金額を減算した金額となります。
⑵ 利益積立金額から減算する金額(法令9①十二)
(算式)
利益積立金額から減算する金額=D-減資資本金額 (※)
※ D >減資資本金額の場合に限ります。
⑴ 資本金等の額から減算する金額
本事例において、資本の払戻し直前の資本金等の額Aは600であり、資本の払戻しの前事業年度終了の時の純資産の額Cは1,200となります。
次にBの金額については、「資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額又は解散による残余財産の一部の分配により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあっては、その交付直前の帳簿価額)の合計額」とされており、本件における資本の払戻しは、適格現物分配によるものではありますが、解散による残余財産の分配により交付されたものではないため、Bの金額は、「適格現物分配に係る資産の交付直前の帳簿価額」130ではなく、「資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額」120となります。
したがって、減少する資本金等の額(減資資本金額)は、60(=600×120/1200)となります。
⑵ 利益積立金額から減算する金額
本事例において、適格現物分配に係る資産の交付直前の帳簿価額が130であることから、Dの金額は130となり、減少する利益積立金額は70(=130-60)となります。
【関係法令通達】
法人税法第2条第12号の5の2 、第12号の15、第24条第1項第4号、第62条の5第3項
法人税法施行令第8条第1 項第18号、第9条第1 項第12号
【出典書籍】
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