保険積立金は譲渡損益調整資金か、適格現物分配できるか

Business,Women,Put,Coin,Stack,Money,And,Many,Bank,Note

保険積立金は譲渡損益調整資産か? また、適格現物分配できるか?

【質問】
 1 )保険積立金はグループ法人税制における「譲渡損益調整資産」に該当しますか。
 2 )保険積立金を現物配当することは可能ですか。また、現物配当した場合、税務上適格要件を満たしていたら、適格現物分配に該当させることは可能ですか。
 3 )上記それぞれについていわゆる「全損型・ただし解約返戻金あり」の保険商品でも可能でしょうか。
Answer
1 )該当しません。
2 )私見ですが、可能だと思います。
3 )「全損型・ただし解約返戻金あり」の保険商品は帳簿価額は0です。この場合でも通常の保険商品(養老等)と同様、1)については該当せず、2)については可能かと思われます。

【解説】

1 )について

(法人税法第61条の13第一号)
第61条の13
 内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)がその有する譲渡損益調整資産(固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で政令で定めるもの以外のものをいう。以下この条において同じ。)を他の内国法人(当該内国法人との間に完全支配関係がある普通法人又は協同組合等に限る。)に譲渡した場合には、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額(その譲渡に係る収益の額が原価の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。以下この条において同じ。)又は譲渡損失額(その譲渡に係る原価の額が収益の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。以下この条において同じ。)に相当する金額は、その譲渡した事業年度(その譲渡が適格合併に該当しない合併による合併法人への移転である場合には、次条第2項に規定する最後事業年度)の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入する。

 譲渡損益調整資産は、上記、法人税法第61条の13第1号の括弧書内によれば、固定資産、土地、有価証券、金銭債権及び繰延資産です。一方「政令で定めるもの」については、法人税法施行令第122条の14第1項で定められており、以下のものは除外されます。

① 売買目的有価証券(第1号)
② 譲受法人で売買目的有価証券として処理されるもの(第2号)
③ 帳簿価額1,000万円未満の資産
(法人税法施行令第122条の14第1項)
第122条の14
 法第61条の13第1項(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)に規定する政令で定めるものは、次に掲げる資産とする。
 一 法第61条の3 第1項第一号(売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等)に規定する売買目的有価証券(次号及び第4項第六号において「売買目的有価証券」という。)
 二 その譲渡を受けた他の内国法人(法第61条の13第1項の内国法人との間に完全支配関係があるものに限る。以下この条において同じ。)において売買目的有価証券とされる有価証券(前号又は次号に掲げるものを除く。)
 三 その譲渡の直前の帳簿価額(その譲渡した資産を財務省令で定める単位に区分した後のそれぞれの資産の帳簿価額とする。)が千万円に満たない資産(第一号に掲げるものを除く。)

 上記の定義から、消去法で考慮すると、保険は「未確定の金銭債権」に極めて近似しているものと想定できます。結論は該当しませんが、その結論にいくまでのアプローチは様々な考え方があります。
 上記の「未確定」は下記からアプローチできます。

・類似業種計算時に「非経常的な利益」は除外されるが、保険の満期解約金もこれに該当する。すなわち「未確定」だからである。

 譲渡損益調整資産に該当しないという考え方は下記からアプローチできます。

・そもそも「金銭債権」ではないという考え方
 …保険積立金は従来まで払い込まれた保険料(の一部又は全部)にすぎません。これが移転しても民事法的には、契約者等、各当事者の地位の変更にすぎないという考え方です。課税実務上ではこのアプローチが大勢を占めます。

 以上は、「全損型・ただし解約返戻金あり」の保険商品でも取扱いは全く同様です。

2 )について

 旧商法下では、金銭以外の財産を配当(現物配当)として株主に交付できるかについては争いがありました。しかし、会社法では、会社法第454条第1項より現物配当は明確化されています。
 一方、会社法第309条第2項第10号より、現物配当については、株主に対して金銭分配請求権を与える場合を除き、株主総会の特別決議が必要とされています。これは下記のように株主利益保護の趣旨によるものです。
 株主の属性如何によっては、当該現物配当財産を有効利用できない、または、換価が困難である、といった不利益が生じる恐れがあり、これの救済措置が上記です。
 他にも金銭配当を同様の各種規制(財源規制等)があったり、当該現物は上記の制度趣旨から資産性のあるものに限定されるなど、そもそも現物の定義自体(射程)についてはまだ議論の余地があるところかもしれません。
 保険は上記、「当該現物配当財産を有効利用できない、または、換価が困難である」とも考えられず、また「資産性のあるもの」(会計上、税務上のいわゆる資産ではありません。)といえることから(ただし、譲渡損益調整資産でみた「金銭債権」ではありません。)、現物に該当し、現物配当は可能です。
 会社法上の「現物」に該当する限り、税務上適格要件を満たしている場合、適格現物分配も可能になると思われます。
 以上は、「全損型・ただし解約返戻金(解約返戻金は資産性あるものだから)
あり」の保険商品でも取扱いは全く同様です。
 上記が一義的な原則です。
 では所得税基本通達においての「配当」の定義を確認します。

(所得税基本通達24―1)
【剰余金の配当、利益の配当又は剰余金の分配に含まれるもの】24―1
法第24条第1項に規定する「剰余金の配当」、「利益の配当」及び「剰余金の分配」には、剰余金又は利益の処分により配当又は分配をしたものだけでなく、法人が株主等に対しその株主等である地位に基づいて供与した経済的な利益が含まれる。

これは法律的な剰余金の処分でなくても株主等の地位に基づき受ける経済的利益は税務上の配当に該当するとした規定です。

(所得税基本通達24―2)
【配当等に含まれないもの】
24― 2
 法人が株主等に対してその株主等である地位に基づいて供与した経済的な利益であっても、法人の利益の有無にかかわらず供与することとしている次に掲げるようなもの(これらのものに代えて他の物品又は金銭の交付を受けることができることとなっている場合における当該物品又は金銭を含む。は、法人が剰余金又は利益の処分として取り扱わない限り、配当等(法第24条第1項に規定する配当等をいう。以下同じ。)には含まれないものとする。
 ⑴ 旅客運送業を営む法人が自己の交通機関を利用させるために交付する株主優待乗車券等
 ⑵ 映画、演劇等の興行業を営む法人が自己の興行場等において上映する映画の鑑賞等をさせるために交付する株主優待入場券等
 ⑶ ホテル、旅館業等を営む法人が自己の施設を利用させるために交付する株主優待施設利用券等
 ⑷ 法人が自己の製品等の値引販売を行うことにより供与する利益
 ⑸ 法人が創業記念、増資記念等に際して交付する記念品
 (注) 上記に掲げる配当等に含まれない経済的な利益で個人である株主等が受けるものは、法第35条第1項《雑所得》に規定する雑所得に該当し、配当控除の対象とはならない。

 しかし、所得税基本通達24―2のように株主等の地位に基づき受ける経済的利益でも、法人の利益変動にかかわらず供与されたものは雑所得となる、とあります。
 考え方としては2つあると思います。

(1つ目)基本通達前段を文理で解釈する見解
「法人が株主等に対してその株主等である地位に基づいて供与した経済的な利益であっても、法人の利益の有無にかかわらず供与することとしている次に掲げるようなもの(これらのものに代えて他の物品又は金銭の交付を受けることができることとなっている場合における当該物品又は金銭を含む。)は」
…基本通達の前段重視⇒雑所得分類⇒配当ではないので現物分配対象にならない。
(2つ目)基本通達後段の文理を事実認定ベースで当局に認識させる見解
「法人が剰余金又は利益の処分として取り扱わない限り、」
…基本通達の後段の文理について事実認定ベースで確定させる、すなわち、通常の金銭配当を同じ会社法上の諸手続き、税務上の諸手続きを平仄を合わせる。

 なお、適格現物分配においても解散時にはみなし配当事由が生じます。
例えば解散直前のB/Sが

(借方) 土地 400 (貸方) 資本金等の額 40
                利益積立金額 360

の場合、解散法人の税務仕訳は

(借方) 資本金等の額 40 (貸方) 土地 400
     利益積立金額 360

となり、みなし配当360が生じます。
 利益剰余金を原資とする配当による現物分配が行われ、それが適格現物分配に該当する場合には、現物分配資産について当該現物分配直前の帳簿価額にて譲渡したものとして取り扱います(法法62の5③)。つまり、譲渡損益は認識しません。
 ここで「帳簿価額」とは法人税法上の帳簿価額を指します。法人間移動に関する典型的なスキームは下記です。
 関係会社間で親会社に借入金が滞留しているとします。その時子会社から①低解約型の逓増定期保険を本体会社から持株会社に譲渡する、その後解約し、借入金を返済又は②低解約型逓増保険や全損定期保険を本体会社から持株会社に現物分配する、その後解約し、借入金を返済というものがあります。

 ①においては法人間の保険の売買の可否が問題となります。当局との見解の相違に備えて、予めグループ法人税制が適用できる関係会社間で実行しておきます。グループ法人税制下における譲渡損益調整資産は損益を一定の実現事由まで認識しないので、繰延べが可能となります。

 ②においては、配当の可否が問題となります。全損定期保険を配当財産とした場合の配当額は0 と考えます。全損定期保険は保険料支払い時に支払保険料として損金経理されており、法人税法上は償却済みです。グループ法人税制下においては法人税法上の帳簿価額を用いますから0 評価でよいということになります。

 

[dropshadowbox align=”none” effect=”raised” width=”auto” height=”” background_color=”#f2f2f2″ border_width=”0″ border_color=”#dddddd” rounded_corners=”false” inside_shadow=”false” outside_shadow=”false” ]

【出典書籍】
Q&Aみなし配当のすべて
<ロギカ書房>

[/dropshadowbox]

記事に関する質問は一切受け付けておりませんので、ご了承ください。
ご質問がある場合は、こちら

関連記事

この投稿者のその他の記事