相続税等の土地の評価は難解で、また間違った場合、課税価格や税額に及ぼす影響が大きいため苦手意識がある税理士の方も多いのではないでしょうか。その中でも、最も基本的な内容であるにも関わらず、非常に判断に迷うことが多いのが評価単位です。
まず、地続きの複数の土地を法人に貸し付けている場合で、その法人がその土地上に複数の建物を建て、それぞれ建物ごとに別の用途で利用している場合の評価単位はどうなるのでしょうか。
この場合、貸地の評価単位は、同一人に貸し付けられている部分ごとに1画地の宅地とするので評価単位は1つになります。たとえ借主が複数の建物を建てていたとしても評価単位は別になりません。以下の裁決があります。
しかしながら、本件土地はその全体が借地権者の事業に係る建物の敷地として一体として貸し付けられ、現実に借地権者の事業の用に供されていることが明らかであり、また、本件土地は分割されることなく、その全部を相続人が相続していることから、貸し付けられている土地全体を1利用単位、すなわち1画地の宅地と判断するのが相当である。(平10.6.23) 裁決事例集No55・479ページ
請求人らは、①本件被相続人がA社に対して同時期に共同住宅5棟を一括で賃貸する建物等一括賃貸借契約を締結していたこと、②本件契約において敷地の使用範囲が3筆の宅地の全体に及ぶ旨が定められていることからすると、本件賃借会社の敷地利用権は本件各宅地の全体に及んでいるので、本件各宅地をそれぞれ取得した者(2名)ごとに、2画地の宅地として評価すべきである旨主張する。しかしながら、一般に、建物の賃借人は、建物の賃貸借契約の性質上当然に、建物の使用目的の範囲内においてその敷地の利用権を有するものと解され、所有する宅地の上に貸家が複数ある場合、各貸家の敷地に、各貸家の使用目的の範囲内において利用権がそれぞれ生じ、その利用権に基づき各貸家の敷地がそれぞれ利用されることとなるところ、(中略)本件賃借会社の敷地利用権の及ぶ範囲は、本件各共同住宅(5棟)の敷地ごとに及んでいるものと認めるのが相当である。(中略)本件各土地の評価単位は、5画地とすることが相当である。
(平26.4.25)
(執筆:税理士・不動産鑑定士 山下 太郎)