株式譲渡で売主が個人の場合における課税関係

Share on twitter
Share on facebook
shutterstock_1199007088
中小・零細企業M&Aについて株式譲渡で売主が個人の場合における課税関係を教えてください。
下記の通りです。

【解説】

 下記が定石です。類書でも全く同じ内容の記載があります。合計譲渡金額が13億円、当該株式取得価額が1億円だったとします。この場合、合計金額で売却すると、(13億円ー1億円)×20.315%=約2億4,000万円となりますが、対象会社の損金算入効果が期待できません。そこで譲渡価格10億円、役員退職金3億円とします。オーナーに係る税金は通常下記の通りとなります。
 退職金に係る税は約7,600万円、株式譲渡所得税(10億円ー1億円)×20.315%=約1億8,000万円です。一方で売主に係る税額は3億円×30%=9,000万円となります。
 退職金の支給に関して、実務上の考慮要素は下記の通りです。買収後、一定期間対象会社に残留すると、役員が実質退職していないものとみなされ、否認されるケース(又は株式譲渡代金に加算されるケース)があります。また、当該金額の妥当性について、税務上の過大性の問題の他に、キャッシュアウトをネット(純額)でシミュレーションしなければならない論点もあります。つまり、外部へのキャッシュアウトを伴う株価引き下げ策では売却後の税引後手取額が逆に減少するケースもあり得ます。退職金支給の場合、「株式譲渡価額ー株式譲渡に係る税金」と「退職金+株式譲渡価額ー(退職金に係る税金+株式譲渡に係る税金)」との最適バランスを考慮します。なお、実務では、売主が個人株主の場合、役員退職慰労金の過大性が問題になる場面を除いては、配当は支給しません。

 

【出典書籍】
Q&A「税理士(FP)」「弁護士」「企業CFO」単独で完結できる
中小企業・零細企業のための M&A実践活用スキーム
<ロギカ書房>

記事に関する質問は一切受け付けておりませんので、ご了承ください。
ご質問がある場合は、こちら

関連記事

この投稿者のその他の記事