RSUストックオプションを付与された取締役が海外赴任した場合

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= Case =
 内国法人の取締役が、ストックオプションの付与を数回受けた後に、欧米子会社(※1)に5年以上赴任した場合につきまして、次の2種類のストックオプションの日本での課税関係を記載致しました。(紙面の都合上詳細な記述は省略しております。)

■税制適格ストックオプションの場合
■特定譲渡制限付き株式RSU(リストラテッド・ストックオプション・ユニット)の場合 

Ⅰ.長期インセンテイブプランの概要

 はじめに長期インセンテイブプランを、報酬の観点から確認すると幾つかの種類に分けることができます。主な長期インセンテイブは概ね下記の分類となりますが、さらにストック・オプションは税制適格と税制非適格としても区分することができます。

Ⅱ. 特定譲渡制限付き株式(RSU)とは

 Ⅰ.の分類の中で「特定譲渡制限付き株式」=RSU(リストラテッド・ストックオプション・ユニット 以下RSUと言う)とは、法人税と所得税法施行令にそれぞれ規定されている「譲渡制限付株式」の要件を満たした上で、さらに「特定譲渡制限付株式」を満たす株式を指しますが、RSUの特徴は、「役務提供の対価として役員等に生じる債権の給付と引き換えに交付される株式等であること」と言えます。
H28年税制改正において会社法上の法的構成の整理のもと、法人税法、所得税法ともに税務上に許容性を与えた優遇的な取り扱いが導入されました。


Ⅲ. (通常)税制適格ストックオプションの場合の課税関係

 次に通常の税制適格ストックオプションの課税関係を簡易的にまとめると、概要は次になります。

(1)国内居住者の出国時(国内法)

1)国外転出課税
 海外出向時において、権利を行使して国内の保管口座に保有している有価証券の時価相当額の合計額が1億円以上である場合には、転出時の時価で譲渡があったものとみなして、未実現の譲渡益に対して15.315%の国外転出課税を受けることになります。(譲渡制限が解除されていない株式は除外される所法60の2、所令170①)
2)納税猶予
 国外転出課税を回避する為に納税の猶予をうけることもできます。この場合は納税管理人を国外転出時までに届け出をし、確定申告時期までに猶予を受けたい所得税相当額の担保を税務署へ提出します。
ただし、権利行使した株式を保管口座から一定の取り決めに従わずに移管した場合には、原則通り15.315%の転出課税の対象となりますので注意が必要です。


(2)非居住者になった後の課税関係

1)国内居住・非居住者であっても権利行使時は所得の認識はしない。(租税特別措置法第29条の2、措置法令第19条の3第14項)
2)海外赴任中に、権利行使しただけの場合には、課税関係は生じない。
3)海外赴任中に、権利行使後株式の譲渡による所得は、15.315%の税率により申告分離課税の対象となる。(租税特別措置法第37条の12)
4)OECDモデル租税条約及びコメンタリーとの調整

 また、各国において発生した所得は給与所得(第15条)や譲渡収益(第13条)について、各モデル租税条約条項に基づき調整されることになる。

①給与課税時期の違いと二重課税排除(租条第15ー8ー2)
ストックオプション自体の課税問題として、報酬が支払われる元の勤務期間が複数年度に亘り、所得が実現される時点が異なることに起因している。これについては、所得源泉地国のストックオプションから生じる利益のうち、当該国で行われた勤務から生じた報酬を構成する部分に、所得源泉地国に一時的課税権を認めることで生じる二重課税は、租税条約の二重課税排除の規定により、居住地国が救済する必要があるとしている。
②給与所得と譲渡収益の区分(租条第15ー8ー3)
報酬制度として付与されるストックオプションは、その利益は権利行使時や譲渡時を基準に給与所得と譲渡収益に区分するとしている。また付与から権利行使時までの利益についてはいずれの時点で課税するかに関わらず第15条の「給与所得」が適用され、権利行使後の株式の価値の増加に対応する所得は、第13条「譲渡収益」の規定が適用される。
③複数の国で勤務した場合の所得配分の原則(第15ー8ー5)
複数国で勤務した場合、この規定により課税の対象となるのは、ストックオプションの付与から権利行使日までの利益のうち、その付与日から権利行使日までの期間の中で日本における勤務した機関に対応する所得となる。

Ⅳ.RSUの場合の課税関係

 次にRSUの税制適格の課税関係を簡易的にまとめると、概要は次のようになります。

 国内勤務期間中にRSU株式の交付を受けた役員が、海外子会社に赴任した場合の具体的な課税関係は下記のようになります。

(1)国内居住者出国時・非居住者になった後の課税関係

1)譲渡制限解除前のRSUは国外転出課税の対象外。(所法60の2①、所令170①一)
2)譲渡制限解除後保管して出国する場合は国外転出課税あり。
(要件:保有する株式等の合計額が1億円以上等)15.315%
3)海外赴任後に譲渡制限が解除された場合は、解除時の株式時価20.42%にて課税。
(要件:内国法人の役員)の給与課税が生じる。
※ただし例外的に日本で役員報酬課税が生じないこともある(所基通161ー29.161ー30)
4)解除後の株式を売却した場合は譲渡所得課税が生じる。
5)海外赴任中に、RSUの権利を行使しただけの場合には、課税関係は生じない。

(2)解説
 RSU株式を付与する場合、RSU株式の譲渡の制限が解除された場合の所得区分について、当該株式の交付が雇用関係又はこれに類する関係に基因して交付されたものであるときは、その日における価額が役員等に「給与等課税事由」が発生したとして、給与、退職金等になる(所令84①、法令111の2④、所基通23〜25共-5の2)国内法人の役員資格で取得する報酬は、その勤務地が国内・米国にいずれであっても、国内源泉所得として日本の課税の対象となり、非居住者に対して20.42%の源泉徴収を行う必要があります。(所法212条、213条第1項)

 なお、制限解除後の株式の価値の増加に対応する所得は、税制適格ストックオプションと同様にOECDモデル租税条約13条の規定の適用を受け区分されます。(参照:Ⅲ.(2).4)②.③)

(3)Other Points

1)税額控除繰越期間を超えて帰国した場合
付与時点では日本勤務、制限期間中は海外赴任、制限解除は日本帰国後という場合、海外での制限期間中の勤務期間に対する所得について現地国での課税が生じますが、外国税額控除の繰り越しは3年までとなるため(所法95③)解除後のタイミングによっては外国税額控除の適用が受けられない場合もあるので、海外赴任者のRSUの付与設計は事前に検討が必要となります。
2)内国法人から海外役員へ
内国法人からRSU株式の交付を受けたもともと非居住者であった役員は、制限が解除され権利が確定した場合には、日本国内において勤務したことがなくても、国内源泉所得となり発行国内法人にて20.42%の源泉徴収されることになります。
3)海外子会社の役員へ
海外子会社から海外に居住する役員等にRSUを支給し、譲渡制限が解除されたとしても、所得税法では「給与等課税事由」は生じない(非居住者の所法161十二)とされるため、係る所得は課税事由に該当しないと解されます。

※1 日本型のRSUは、特定譲渡制限付株式を金銭報酬債権と株式で相殺する(債権の現物出資)というユニークな構成になっているため、海外各国の税務上の取扱いと必ずしも一致するとは限らないので現地の税法の調査が必要となります。

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