外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)③

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前々回前回に続き、3回目のFATCAにおける報告書様式を記載しております。
今回は、FBAR(※1)の外国銀行金融口座レポートの報告となります。概要は次の通りです。

FBAR(書式はFinCEN Report 114)は、Bank Secrecy Act(BSA:銀行秘密法)に基づき、米国財務省の一部門であるFinancial Crimes Enforcement Network(FinCEN:金融犯罪取締執行ネットワーク)に対して開示する報告書になっています。FBARの目的は、米国外にある金融口座を米国当局に対して開示することにあります。

Ⅰ.対象となる報告者

U.S. Person(※2)で、米国外の銀行口座にいずれかの任意の時点で$10,000ドル以上残高があった場合はFBARの提出が必要になります。詳細は下記のⅢ.の一覧表に記載しています。

また、FABRは、口座の保有者それぞれが提出する必要がありますので、確定申告を夫婦合算で行ったとしても、夫婦それぞれが別個にFBARを提出する必要があります(全ての米国外口座が夫婦共同名義である場合には、例外的に、夫婦共同でのFBAR提出が認められています)。
さらに、未成年など被扶養者であっても、口座の法的所有者である限り、その未成年者個人もFBAR提出を行う必要があります。

Ⅱ.提出先と期日

2012年度までIRSがFinCenの代行としてFBARの取扱いを行ってきましたが、IRSとFinCENは別組織でしたが、2013年7月1日からは、FBARの提出は全てEファイル(オンラインによる電子申告)が義務付けられ、書面では提出は認められなくなっています。
なお、FBARはIRSに対して提出される確定申告書(Form1040)とは別途、4月15日までにFinCenに対して報告を行います(2016年度分から締め切りが6月30日から4月15日へと変更となりました)。またFinCENへのEファイルは、IRSが管理している確定申告用のものとは異なるシステムを利用する必要があります。

Ⅲ.Form8938とFBARの要件の比較

ここで前回記載しましたForm8938との比較においてFBARがどのように異なっているかを対比表で記載しました。
なお、Form8938の提出要件は、FinCEN Form114(外国銀行および金融口座のレポート)を提出する納税者の義務に取って代わるものではなく、その他の方法で影響を与えるものでもありません。
個人および米国事業体は、各要件および関連する報告基準値を確認し、Form8938またはFinCEN Form114、あるいはその両方を提出する必要があるかどうかを判断する必要があります。(See:IRS)


※1)FBARとは:Report of Foreign Bank and Financial Accountsの略
※2)U.S. Person とは:

① 米国籍保持者、永住権保持者、税法上の米国居住者、および税法上の米国非居住者で内国歳入法6013条あるいは7701条 (IRC 6013(G)or (H) or IRC.7701(b)(4)) に基づいて居住者としての申告を選択した者であっても、F-1やJ-1 ビザ保有者 (Form8843提出が必要)、“Closer Connection”ルールが適用される(Form8840の提出が必要)者は、一定要件を満たす限りにおいては例外として“U.S. Person”には含まれません。
② 一方、米国国内税法(”Substantial Presence Test”あるいは183日ルール)において、居住者とみなされる者で、租税条約上の“Tie Breaker”ルールによって米国非居住者となることを選択した場合には、例外扱いは認められず、“U.S. Person”としてFBARにて報告を行うことになります。
③ 個人に限らず、会社やパートナーシップ、信託、Estateなどの法的主体も、個人の場合と同様、FBAR提出の義務があります。

See:IRS.gov/Businesses/Comparison-of-Form-8938-and-FBAR-Requirements for a chart comparing Form 8938 and FBAR filing requirements
:FBAR (Foreign Bank Account Report) 114
(2020/10/30現在)

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