日本と米国の所得税フレームワーク

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 日本人であっても、外国での確定申告が必要な方がおられます。主には外国にある資産から所得が発生しているなどの理由からです。
 たとえば、米国に所有する不動産から生じる家賃収入、金融商品からの利息や配当、海外資産の売却などがあげられます。このような所得が生じた場合は、国内だけではなくその国においても申告が必要になることがあります。

1.日本と米国の所得申告のフレームワークの違い

 それでは、日本との対比において米国申告について記載します。
米国と日本の所得税の計算方法の違いは大きく次の一覧のようになります。
 前提として、米国の婚姻関係は日本のような戸籍上の配偶者だけではなく、事実婚や同性婚も含まれるところが日本と大きくことなります。
 そして、米国の市民権をもたない配偶者と、夫婦合算申告をすることもできますし、子供がいるときは、合算申告せずに独身世帯主申告をすることも選択できます。

2.米国における個人所得税の流れ

 所得税の計算スキームは、日本版とほぼ同様で、税率も超過累進税率です。
米国人の確定申告はForm1040という書式で行いますが、日本人は非居住者ですのでForm-10140 NR(non resident)という申告書になります。申告は暦年であり申告期限は基本的には翌年4/15日ですが、半年延長可能ですのでそうすると10/15日、単純な非居住者は6/15日でも可能となっています。
 申告書は次のようなフレームワークです。

3.米国の所得税率(2020年)

 米国では、各自のステイタスによって4種類の税額表があり、選択ができます。2019~2020/4までの連邦所得税率は次表のとおりです。


(参照: https://www.nerdwallet.com/blog/taxes/federal-income-tax-brackets/

4.所得税申告書の具体的な事例

 上記のフレームワークとタックスレートから、具体的な事例で「夫婦合算申告」と「夫婦個別申告」で計算した場合を比較すると、次のように税額に差がでます。

*米国赴任日:2019年6月1日から
*婚姻状況:既婚者
*所得内訳:日本&米国から給与
*金額:日本では@80万円/M&米国駐在時は@15,000㌦/M
*為替:1㌦=110円
*日本住宅ローン利息:6,000㌦/Y(単位:㌦)


(人的控除は停止していますので省略しています)

➣ この事例では、税額計算において夫婦合算申告(通年居住者を選択)の税率を使う方が、
夫婦個別申告(Dual Status)より6,818㌦節税になることがわかります。

<補足説明>
所得控除には、2種類あり有利な方を選択できます。
*項目別控除とは・・医療費控除、支払利息、州税、固定資産税など
*標準控除とは・・・独身者Ⅰ.2万㌦、夫婦合算2.4万㌦、夫婦個別1.2万㌦、独身世帯1.8万㌦
➣ しかし、Dual Statusを選択すると標準控除が使えませんので事例では0になっています。

【Dual Status(デユアルステイタスについて】
 Dual Statusとは、課税年内に居住者と非居住者の期間の両方を持つ年が該当し、日本からアメリカに赴任してきた年や、赴任を終えて日本に帰国する年がこれになります。

 Dual Status は次のように制限があります。
1・標準所得控除はできず、項目別所得控除を適用することになります。
2・夫婦合算申告を選択することはできません。
3・独身世帯主の税率の適用できません。
4・Earned Income Credit(勤労所得控除)のような税額控除の適用はできません。
5・デュアル・ステイタスの申告時は、Form1040、とForm1040NR(non resident)の両方の申告書が必要になります。

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