相続開始直前に不動産を購入等して、小規模宅地を適用することによる「行き過ぎた節税」を防止するため、小規模宅地の特例の要件が複雑化しています。今回は貸付事業に絞って新たな要件を整理します。
被相続人や生計を一にする相続人の貸付事業の用に供されていた宅地については、小規模宅地を適用すれば、200㎡までは評価額が50%減額されます。貸付事業は、事業的規模でなくても、相当の対価を得て継続的に行っていれば適用があります。また、建物が建っていなくても、アスファルトやフェンスなど構築物があれば、月極駐車場の敷地等についても適用があります。
しかし、平成30年4月1日以降は、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供した敷地の内、一定のものについては、小規模宅地の適用は受けられなくなりました。なお、注意しなければならない点は、「取得した」ではなく「貸付事業の用に供した」となっている点です。以前から所有している不動産であっても、新たに貸付をしたものは、適用対象外となる可能性があります。
まず、この改正には経過措置があります。法改正以前から貸付されていた宅地については、相続開始前3年以内に貸し付けられたものであっても、特例の適用があります。このため、貸付時期が平成30年3月31日以前であれば、3年以内の縛りを考慮する必要はありません。
次に、相続開始の日まで3年を超えて継続的に事業的規模で貸付を行っていれば、相続開始前3年以内に新たに貸付の用に供された宅地であっても、その宅地は小規模宅地の適用があります。
貸付事業については、事業的規模による貸付と事業的規模でない貸付(準事業)に分けられます。事業的規模であるかどうかは、明文はありませんが、所得税基本通達26-9により判断されると考えられています。いわゆる「5棟10室」基準です。駐車場の場合は5台=1室と考えます。なお、5棟10室に満たない場合でも、規模が大きい不動産等については、事業的規模に該当する場合があります。私見ですが、地方税の事業税が課税されるか否かも一つの基準になるのではと考えられます。
法改正の趣旨が、「行き過ぎた節税防止」であるため、以前から貸付を事業的規模で行っていた者については、新たに貸付用物件を購入等して事業の用に供したとしても、通常の経済的行為であるため、小規模宅地の適用を除外する理由はないからです。
なお、新たに貸付事業の用に供されたかどうかは、措置法通達69の4-24の3に規定があります。
②継続的に賃貸されていた建物等につき建替えが行われた場合において、建物等の建替え後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、賃貸されていたとき
などについては、新たに貸付事業の用に供したとは取り扱われません。
以上のように、貸付事業の小規模宅地適用で、被相続人が事業的規模でない貸付を行っていた場合には、小規模適用物件の賃貸開始時期の確認は必須事項となります。