スキームの概要
中小・零細企業における事業M&Aの手法は株式譲渡、事業譲渡、又は合併、株式交換等の組織再編成があります。現在の実務では、株式譲渡が50%、一部事業譲渡が50%程度の実行と見受けられます。
不動産M&Aにおいては、会社分割、事業譲渡、個別資産(この場合、不動産)売却契約に大別されます。
従来までは株式譲渡がほぼ100%でしたが、簿外債務等潜在リスクの包括承継リスクは一時、社会問題化し、また、そのリスクを認識した専門家及びクライアントの増加により、事業譲渡を、「あえて」選択するのが、昨今増加傾向にある主原因です。また、税負担軽減スキームを比較的自由に設計できるのが事業譲渡スキームであるから、という原因もあります(出資持分の定めのない医療法人では事業譲渡しか手法がとり得ません)。
なお、類書において一部誤った認識があるので誤解を修正します。株式譲渡スキームは包括承継であり、後述する未払い残業代、簿外債務、訴訟リスク等が自動的に引き継がれ、事業譲渡スキームにおいてはそれらが一切遮断できるとの記載も多く見受けられますが、厳密には違います。仮に事業譲渡スキームを採用したとしても、当該事業と簿外債務や訴訟リスクは事業全体かその一部かを法律的に峻別することは極めて困難です。例えば事業譲渡の対象に不動産があり、当該不動産に土壌汚染があったとします。この場合、リスク遮断は、当該不動産の土壌汚染の除去や、それに係る費用についての譲渡価額減額等々、個別具体的に遮断は可能です。
しかし、事業については一部を切り取ったところで、簿外債務や訴訟リスクは、当該一部にひも付きになっているわけではないので、完全に遮断することはできないのです。M&A専門の大規模ローファームにおける法務実務では、上記の認識が通常です。中小・零細企業においても全く同様のことがいえます。
結果として、株式譲渡スキームか事業譲渡スキームか個別資産売買契約かはタックスプランニングのシミュレーション上での有利・不利判定においてのみ機能するという考えであるべきです。
上記の実務的傾向を踏まえて、原則として株式譲渡及び事業譲渡を詳細に検証します。組織再編成における課税関係については、類書をご覧ください。まずは、概要を列挙しておきます。
(第三者)М&A(Mergers and Acquisitions、合併と買収)は、企業や企業の事業の合併や買収の総称であり、その手法として、株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割、株式交換、株式移転等があります。
【出典書籍】
Q&A「税理士(FP)」「弁護士」「企業CFO」単独で完結できる 中小企業・零細企業のための M&A実践活用スキーム
<ロギカ書房>
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