第三者M&Aのメリット・デメリット

M&A
第三者M&Aのメリットとデメリットについて教えてください。
売主、買主双方に区分して説明します。

1.第三者M&Aのメリット

・売主株主について
創業者利潤の獲得です。創業者利潤の獲得方法は様々な手法があります。それらの特徴です。

…廃業、清算し、現金獲得
清算申告が必要です。残余財産相当額が分配されるものの、各諸税の課税がなされ手取額は減少します。創業者利潤獲得という目的が主であれば、採用すべき方法ではありません。課税実務での大きな考慮要素としては、残余財産に営業権が考慮されないことです。その分、通常の株式譲渡に比して手取額は減少します。
…配当して現金獲得
配当課税は個人所得において総合課税の対象になるため最高税率での課税がなされる場合があります。配当控除も僅少なたため、通常採用されません。配当受領期間は廃業できないが、いずれ廃業すると予定しているのなら、結局、上記と同様の結論になります。不得手です。
…上場し、株式を第三者に売却
中小・零細企業においては非現実的です。

・時間の獲得
M&Aによってある程度まとまった現金が獲得できるため、時間を自由に使えることができます。

・健康問題への対処
経営者が倒れたら会社が回らないといった最悪の状況をM&Aによって解消できます。健康な状態においてM&Aを実行しなければなりません。

・従業員への配慮
上記の廃業に比して、M&Aの場合、最終契約書において売主企業の従業員の雇用の確保が明記されることが一般的です。

・取引先への配慮
通常、売主より買主の信用力のほうが高い方が多く、取引先にとっても歓迎すべきことといえます。

・金融機関への配慮
廃業は融資先が減ることを意味することから金融機関にとっては、最悪の選択肢です。一方、M&Aにおいては売主より買主のほうが信用力が高い会社である場合が通常のため、金融機関も新規拡大の意欲が高まります。

2.第三者M&Aのデメリット

・第三者との交渉の困難性と不確実性
相手先が見つからないリスク、諸条件(中小・零細企業においては譲渡価格の問題に終始します)を満たさないリスクです。実務上は、ここで頓挫することがほとんどです。

・表明保証責任、損害賠償責任(補償条項)
最終契約締結時に、売主は買主に対して、契約の前提となる特定の条項について、それが事実であることを表明し保証する表明保証責任と、表明保証責任に違反した場合の罰則としての損害賠償責任を負うことになります。表明保証という言葉は米法の契約に由来するため(M&Aは米法、アングロサクソン系の法体系の契約実務が源流なため、それを最初に日本語に直訳したものが今でも日本契約書において残っています)、従来においては、我が国での法解釈に不明な点が多々ありました。東地平成18年1月17日以降、我が国でも裁判例が蓄積し、解釈は明確になってきています。

【裁判年月日等】平成18年1月17日/東京地方裁判所/民事第37部/判決/平成16年(ワ)8241号(D1-Law.com(第一法規法情報総合データベース)【判例ID】28110372)

【要旨】
1.企業買収を目的とする株式譲渡契約において、被買収企業である消費者金融会社の株式譲渡価格が会社の簿価純資産額を基準に決定された場合、会社の和解債権処理により簿価純資産額が不正に水増しされていたことを明確に認識しながら監査法人にこれを秘匿していた株式譲渡人は、株式譲渡契約締結時において、その会計処理が適法に行われ、貸出債権に関する記録が正確であり、デューディリジェンス(買収監査)において開示されるべき資料が開示されたこと等を表示、保証した表明保証責任に違反し、損害賠償義務を負うとされた事例。

2.企業買収を目的とする株式譲渡契約中で、売主が買収対象会社の財務諸表が一般に承認された会計原則に従って作成されている旨を表明保証した場合において、実際には貸倒損失が過少に計上されており、売主に表明保証した事項に関する違反があると認められた事例。

3.企業買収を目的とする株式譲渡契約中において売主が行った買収対象会社の財務諸表が一般に承認された会計原則に従って作成されている旨、及び、デュー・ディリジェンスにおいて信義則上開示されるべき資料等が漏れなく開示されそれが正確である旨の表明保証した事例に関する違反があったとして、売主の買主に対する損害補償義務が認められた事例。

4.企業買収を目的とする株式譲受けに際し、表明保証を行った事項に関して売主が違反していることを買主が重大な過失により知らなかった場合には、公平の見地に照らし、売主は表明保証責任を免れる(買主に重大な過失がないと認められた事例)。

5.貸金業を営む会社が貸付額より少ない金額で債務者と和解した場合に計上すべき貸倒引当金を計上しなかった会計処理が、会計基準の実務指針に違反すると認められた事例(当該会社を売却する企業買収契約上、売主に表明保証した事項に関する違反があると認められた事例)。

【裁判年月日等】平成28年6月3日/東京地方裁判所/民事第42部/判決/平成25年(ワ)32578号/平成27年(ワ)5816号(D1-Law.com(第一法規法情報総合データベース)【判例ID】29019110)

【要旨】
1.一般乗用・貸切旅客自動車運送事業等を営むA株式会社が、売主(税理士)からB株式会社の発行済株式を譲り受ける旨の契約を締結し、同契約において、売主による表明保証の内容として、基準貸借対照表が適正な会計基準に基づいて作成されており、そこに記載されていない簿外債務及び偶発的債務等は存在しない旨が定められていた場合において、株式譲渡の実行後に、その実行前におけるBの純資産額の簿外債務の存在が判明したときは、売主は、簿外債務に相当する金額について損害賠償責任を負う。

 実務上、買主側は各種DDにより売主の法務、財務、事業等々を精査しますが、中小・零細企業実務においては、契約締結時において完全な情報を取得することは不可能です(情報の非対称性)。そこで上記表明保証やそれに違反した場合の補償条項を契約書上は付します。しかし、中小・零細企業実務においてはそれらの実効性は極めて乏しいです。

 

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【出典書籍】
Q&A「税理士(FP)」「弁護士」「企業CFO」単独で完結できる 中小企業・零細企業のための M&A実践活用スキーム
<ロギカ書房>

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