バリアフリー工事で家屋の評価替が必要か

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固定資産税

 居住者の高齢化に伴って自宅をバリアフリーとする工事をする方も増えています。工事内容によっては数百万円以上する場合もありますが、固定資産税の評価額が改訂されるケースは稀です。では、この様な家屋を相続税評価する場合、バリアフリー工事費用を別途資産計上しないといけないのでしょうか。
 国税庁のホームページの質疑応答事例に以下のような記述があります。

 増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない場合の家屋の価額は、増改築等に係る部分以外の部分に対応する固定資産税評価額に、当該増改築等に係る部分の価額として、当該増改築等に係る家屋と状況の類似した付近の家屋の固定資産税評価額を基として、その付近の家屋との構造、経過年数、用途等の差を考慮して評定した価額(ただし、状況の類似した付近の家屋がない場合には、その増改築等に係る部分の再建築価額から課税時期までの間における償却費相当額を控除した価額の100分の70に相当する金額)を加算した価額に基づき評価します。

 このためバリアフリーの費用について、建物固定資産税評価額とは別に計上される税理士の方も多いようです。
 しかし、上記の取り扱いは、本来「増改築等」にかかる固定資産税額の改訂が行われるべきなのに、それが行われていなかった場合の取り扱いです。このため、バリアフリー工事がそもそも固定資産税の改定の対象となる「増改築等」に該当するかどうかの確認が必要です。

 まず、固定資産税が改訂される場合は「増改築」となっていますが、通常バリアフリー工事は、建物の増築を伴うものではありません(もちろん例外はあります)。次に改築ですが、固定資産税逐条解説で、家屋の改築とは、「家屋の主要構造部である壁、柱、床、梁、屋根又は昇降設備の一種以上について行われた更新で、その更新のための支出が簡単な修理、修繕等のために支出される程度のものではなく、資本的支出と認められるものをいう」と説明されています。

 一般的なバリアフリー工事については、建築基準法第6条に規定する、建築確認申請書の提出が必要となる「大規模の修繕」又は「大規模の模様替」に該当するものは少なく、そのほとんどが通常の修繕又は模様替に該当するものです。このため、バリアフリー工事を行ったことで、その家屋の再建築価格が増加したとして、固定資産税評価額が改定されるケースは極めて少ないと考えられます。

 以上のことから、原則としてバリアフリー工事は固定資産税評価額が改訂されることがないため、バリアフリー工事の費用部分を別途、上乗せするという必要はありません。しかし、バリアフリー工事であっても、間取り等を大規模に変更した場合は、固定資産税が改訂される可能性もあります(平28.11.17裁決)。このため、内容について判断に迷う場合は、実際の工事内容を示して、市役所等の固定資産税課で、固定資産税の改訂に該当する工事か否かの確認を取ることが必要となると考えられます。

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