借地権の取引慣行がある地域・ない地域

借地権

 法人が土地を借り建物を建てた際、

①権利金を支払わない
②相当地代の支払いをしない
③無償返還の届出を出さない

このいずれにも該当する場合には、借地権の認定課税が行われます。ただし認定課税が行われるのは、使用の対価として通常権利金その他の一時金を収受する取引上の慣行がある場合に限られます。
では、この取引上の慣行があるかどうかは、どのように判断されるのでしょうか。

 法人税法ではありませんが、財産評価基本通達27に以下のように規定されています。

借地権の価額は、その借地権の目的となっている宅地の自用地としての価額に、当該価額に対する借地権の売買実例価額、精通者意見価格、地代の額等を基として評定した借地権の価額の割合(以下「借地権割合」という。)がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める割合を乗じて計算した金額によって評価する。ただし、借地権の設定に際しその設定の対価として通常権利金その他の一時金を支払うなど借地権の取引慣行があると認められる地域以外の地域にある借地権の価額は評価しない。

 このように、借地権の価額の割合は国税局長が定めています。そして国税局長の定める割合がない地域が借地権の取引慣行がない地域だと言えます。

 国税局長が定める借地権の割合は、路線価図及び倍率表に記載されています。路線価図の場合、路線価の数字の後に続くA~Gの記号が借地権割合です。路線価設定地域で借地権割合が無い場所はあまりありませんが、例えば青森県五所川原市などは住宅地域の大部分に数字の後に続く記号がなく借地権割合がありません。また倍率表では、借地権割合の欄が「-」となっていれば借地権割合がありません。
 では、この借地権の取引慣行の有無を納税者が覆すことは可能なのでしょうか。
 いずれも相続、贈与の裁決事例ですが、借地権の取引慣行の有無を争った案件は全て納税者側の主張が退けられています(H13.6.6、H16.2.26、H16.9.10、H21.12.18、H22.10.26、H25.4.24)。
 平成25年4月24日の裁決では以下のように述べられています。

請求人は、本件各土地が所在する地域には借地権の取引慣行がないため、財産評価基本通達27《借地権の評価》のただし書により借地権は評価しないことから、相続税法第9条に規定する利益は受けていない旨主張する。しかしながら、本件各土地の所在する地域は、財産評価基準書において借地権割合が定められているところ、この借地権割合は、不動産鑑定士等の精通者による借地権の取引慣行がある地域であるとの意見を基に評定されていると認められ、さらに、本件各土地の所在する市内においては、借地権の設定された土地は、借地権相当額を控除した価額で売買されていることからすると、本件各土地の所在する地域は借地権の取引慣行のある地域……と認められる。

 実際地価の安い地域では、借地権の設定に際して権利金の授受が行われないことも多いですが、税務当局の主張を覆すことは難しいようです。

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