非居住者金融口座情報(CRS情報)の自動的情報交換

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CRS

 皆様はCRS情報という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか?

 CRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)に基づく非居住者金融口座情報のことですが、この自動的交換制度に日本は平成30年から参加しました。
国際的な脱税や租税回避を防ぐために、OECDで策定されたCRS(共通報告基準)に基づき、各国の税務当局が自国の金融機関から外国に住む顧客(非居住者)の口座情報の報告を受け、年1回、参加国間で情報交換するという仕組みで、平成29年に初の情報交換が行われました。
簡単に言いますと、日本に住んでいない外国人の口座情報をその外国人が住む国へ日本の国税当局が情報提供する代わりに、日本人の海外預金口座の情報もその国の課税当局から自動的に提供されるというものです。

 国税庁の発表によりますと、CRSにより9月以降入手した口座情報は550,705件。64の国・地域にまたがり、その中にはタックスヘイブンやスイスも含まれています。
地域別には、アジア・オセアニアが29万件、欧州が20万件、北米・中南米が4万件、中東・アフリカが1.5万件で、今後さらに情報が追加される可能性もあります。

 口座情報の内容は、顧客の氏名、住所、口座残高、利子・配当の年間受取総額などです。

 国税庁は、受領した金融口座情報と、既存の国外送金等調書、国外財産調書、財産債務調書、その他既に保有している情報と併せて分析をしており、これらの分析を通じて、海外への資産隠しや国際的租税回避行為をはじめとした様々な課税上の問題の追及をしていく方針です。

 国外に5千万円超の財産を持つ人は国外財産調書の提出が義務付けられていますが、平成28年分の提出件数は9,102件に留まっており、実際の感覚と乖離が大きく、未提出の者が多くいるのではないかと想定されていました。

 実際、課税の現場では、富裕層などが海外に資産を保有していると推定されても、その国での調査権限が日本の国税当局に認められていないため、納税者自身の調査協力や相手国の個別の協力がないとその把握は困難でした。海外資産把握に苦心していた国税当局は、まさに宝の山であるCRS情報を分析し、調査に活用し始めています。

 ところで、一昔前は、郵便局に貯金をしておくと税務当局に見つからないと言われていました。
当時から全く調査権限がなかったわけではないのですが、調査を行う手続きが煩雑で、しかも時間を要しました。
また調査できる期間なども銀行等と比べ制限されていたことから、実際に調査は困難でした。
今やその弊害も取り除かれていて、郵便局に貯金していると税務当局に見つからないという事はありません。

 今のところ海外資産は、一昔前の郵便局のように調査の手が及びにくくなっています。しかしながら、この様な情報交換が導入され、更に今後地域も拡大し、提供される情報も多くなれば、国内財産と同様に国外財産についても国税当局に容易に把握される時代が来るかもしれないですね。

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