【質問】
弊社(以下、「P社」という。)が発行済株式の全部を直接に保有するA社を合併法人とし、同じくP社が発行済株式の全部を直接に保有するB社を被合併法人とする吸収合併を予定しています。
なお、合併法人株式を交付したとしても、交付しなかったとしても、資本関係は変わらないため、無対価合併を予定しています。ただし、合併後に、A社株式(合併法人株式)のすべてをP社との間に支配関係のないX社に譲渡することが見込まれているため、本件合併は非適格合併に該当します。
このような場合には、どのような税務処理を行えばよいのでしょうか。
【回答】
ご質問のケースは、対価の交付を省略したと認められるため、合併法人株式を交付したものとして取り扱います。
解説
1.被合併法人の課税関係
平成30年改正前法人税法では、対価の交付を省略したと認められる非適格合併の取扱いについて明確に規定されていませんでした。
これに対応し、平成30年度税制改正では、後述するみなし配当の規定(法法24③)により交付を受けたとみなされる合併法人株式を含めて、その時の価額により取得し、直ちに当該合併法人株式を被合併法人の株主に交付したものとして取り扱うことにより、結果的に、合併法人株式の交付を受けた場合と同額の譲渡損益が発生するように規定されました(法法62①)。
このように、対価の交付を省略したと認められる非適格合併を行った場合には、合併法人株式を交付したものとして譲渡損益の計算を行います。
2.合併法人の課税関係
平成30年度税制改正では、対価の交付を省略したと認められる非適格合併を行った場合において、資産評定が行われていたときは、イに掲げる金額からロに掲げる金額を控除することにより資産調整勘定の金額を計算することが明らかにされました(法令123の10⑮一)。また、ロの金額のほうが大きい場合には、ロに掲げる金額からイに掲げる金額を控除することにより差額負債調整勘定の金額を計算します。
ロ.当該非適格合併等により移転を受けた事業に係る将来の債務(退職給与負債調整勘定または短期重要負債調整勘定を除く。)で当該内国法人がその履行に係る負担の引受けをしたものの額
そのため、対価の交付を省略したと認められる非適格合併を行った場合には、結果的に、合併法人株式を交付した場合と同額の資産調整勘定又は差額負債調整勘定が計上されます。
3.被合併法人の株主の課税関係
平成30年度税制改正では、対価の交付を省略したと認められる非適格合併を行った場合には、合併法人株式を交付したものとみなしてみなし配当の計算を行うことが明らかにされました(法法24③、所法25②)。具体的には、被合併法人が合併法人に移転をした資産の価額(資産調整勘定の金額を含む。)から合併法人に移転をした負債の価額(負債調整勘定の金額を含む。)を控除した金額により計算します(法令23⑦、所令61⑤)。
そして、合併法人株式又は親法人株式のいずれか一方の株式以外の資産の交付を受けていないことから、株式譲渡損益は認識されません(法法61の2②、法令119の7の2②)。
【出典書籍】
無対価組織再編・資本等取引の税務
<中央経済社>