分割事業が債務超過である場合における適格分割型分割

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【質問】

 分割事業が債務超過である適格分割型分割を行った場合には、分割法人において減算すべき資本金等の額、利益積立金額をどのように計算するのでしょうか。

【回答】

 分割事業が債務超過である場合には、分割法人において資本金等の額を増減させずに、利益積立金額の増減として取り扱います。

解説

1.基本的な取扱い

 条文上、分割法人において減算すべき資本金等の額及び利益積立金額について、以下のように規定されています(法令8①十五、9①十)。



A=分割法人の分割型分割の直前の資本金等の額
B=分割法人の分割型分割の直前の移転純資産の簿価純資産価額
C=分割法人の分割型分割の日の属する事業年度の前事業年度終了の時の簿価純資産価額
<減算すべき利益積立金額>
 減算すべき利益積立金額
  =移転資産及び負債の簿価純資産価額-減算すべき資本金等の額

2.問題の所在

 これに対し、実務上、分割事業が債務超過である場合、例えば、100%兄弟会社又は100%親会社に対して適格分割型分割を行う場合において、分割事業の簿価純資産価額が△100百万円である適格分割型分割を行う事案が考えられます。
 このように、分割事業が簿価ベースでマイナスである場合には、上記Bに掲げる金額がマイナスになります。上記の計算式に形式的に当てはめると、分割法人の減算すべき資本金等の額もマイナスになるため、分割法人の資本金等の額が増加してしまうかのように思われます。

3.「控除」と「減算」の違い

 これに対し、法人税法施行令8条1項15号では、「分割型分割の直前の移転資産(当該分割型分割により当該分割法人から分割承継法人に移転をした資産をいう。)の帳簿価額から移転負債(当該分割型分割により当該分割法人から当該分割承継法人に移転をした負債をいう。)の帳簿価額を控除した金額(当該金額がイに掲げる金額を超える場合(イに掲げる金額が零に満たない場合を除く。)には、イに掲げる金額)」と規定されています。
 このように、移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額を控除した金額と規定されており、減算した金額とは規定されていません。条文上、控除と減算は使い分けられており、400から500を控除すれば0となり、400から500を減算すれば△100になります。すなわち、分割事業が債務超過である場合には、上記Bの金額を0として計算するため、分割法人において増減すべき資本金等の額は0ということになります。
 そして、同令8条1項6号及び9条1項3号では、移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額並びに当該適格分割型分割により引き継ぐべき資本金等の額の合計額を減算した金額を分割承継法人に引き継ぐことが明らかにされているため、移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額を減算した金額が△100である場合には、分割法人の利益積立金額が100増加し、分割承継法人の利益積立金額が100減少するということになります。

 

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【出典書籍】
債務超過会社における組織再編・資本等取引の会計・税務Q&A
<中央経済社>

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