本稿で取り上げる事例は、相続を規定する法律=民法を理解しないまま、誤って所得税の必要経費に算入し、否認された(裁判でも負けた)内容となっています。
事業承継問題が年々増えている昨今において、個人事業主の事業承継においても、特に従業員退職金の取扱いについては注意が必要となります。
2つの事例で比較して理解する退職金の必要経費
実際の判決は、東京高裁平成9年3月24日ですが、例示で比較した方がわかりやすいので、裁判内容を基に2つの例で示したいと思います。
【例1】
父は開業医(個人事業)で病死した。息子はサラリーマン(医師免許なし)のため、医院を引き継がず、自己の判断で医院を廃業。勤務していた従業員には退職してもらうこととして退職金を支払い、父の準確定申告において退職金を必要経費に算入した。
父は開業医(個人事業)で病死した。息子はサラリーマン(医師免許なし)のため、医院を引き継がず、自己の判断で医院を廃業。勤務していた従業員には退職してもらうこととして退職金を支払い、父の準確定申告において退職金を必要経費に算入した。
【例2】
父は開業医(個人事業)で病死した。息子は勤務医であったが、父の医院を引き継いだ。勤務していた従業員には引続き勤務してもらうことになったが、従業員と父との雇用契約がいったん終了したことから、父との雇用契約期間を基にして、その分の退職金を支払った。父の準確定申告において退職金を必要経費に算入した。
父は開業医(個人事業)で病死した。息子は勤務医であったが、父の医院を引き継いだ。勤務していた従業員には引続き勤務してもらうことになったが、従業員と父との雇用契約がいったん終了したことから、父との雇用契約期間を基にして、その分の退職金を支払った。父の準確定申告において退職金を必要経費に算入した。
さて、ここまで書けば例2が誤っている(必要経費にならない)と判断できると思いますが、その理由と違いがわかりますか?
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